タイトル 『恵子』




ここはラブホテルの一室。

初老の男性と少女が情事にふけっていた。

「・・あっ、・・・・んっ、・・・んん、・・・・・あんっ、・・」
ギシッ、ギシッ、ギシッ、ギッ
「ケイちゃん、おじさんもお、イキそうだよっ・・・」
初老の男は快感と苦しさが入り交じった様な顔で、少女に訴える。
「あっ、ダメッ。今日は外に出して!」
快感に身を任せていた少女は、慌てて腰を浮かせる。
「おうっ、」どくっ、どくっ、引き抜かれた男根が跳ねるように精を飛ばす。
「あんっ、」下腹部に当たる熱いモノに、思わず吐息を漏らしてしまう少女。


「えー、今日はこれだけ?」
男の出した『おこずかい』にあからさまに不満の声を上げる恵子。
「ごめんね、ケイちゃん。おじさん今月はちよっと出費がかさんでるんだ、
次はもっとあげられるから。今日はこれで勘弁してよ。」
初老の男はそのなりに似合わない様な話し方で少女に頭を下げる。
「・・・うん、じゃしょうがないね。次はもっとサービしてあげるから
ちゃんと用意して来てね。」
と軽く男の頬にキスをする恵子。
(大事なお得意さんだもんね、ココはガマンしとくか。)
「ああっ、おじさん次は奮発しちゃうから。期待しててよ、」
自分の子供くらい歳の離れた少女にキスをされ、顔をほころばしながら
少女の手を握る男。
「うんうん、分かったよ。おじさま」
(よーし、OK、OK)


その日の午後、恵子(けいこ)は友人の和江(かずえ)と
ファーストフードショップにいた。
「それにしても、よく食べるわね〜・・・太るぞ。」
2個目のハンバーガーを平らげ、3個目に手を伸ばす恵子の様子に
あきれ顔の和江。
「だって、アレの後はお腹が空くんだもん。」
モグモグと口を動かしながら、4個目のハンバーガーに手を伸ばす恵子。
「はぁ〜・・・、高校2年生の女の子のセリフじゃ無いわ・・・」
「え〜〜っ、そんなコトないよぉっ。和江の方が遅れてるんだってば!」
4個目を咥えたまま、自分の正当性を訴える、恵子。
「ああ、分かった。分かったから、食べちゃいなさい。」
「うん、もぐもぐ・・・・」
(だけど、この子もこんな可愛い顔して『援交』なんて
よくやるわよ・・・・。)
友人の恵子が最近になって、いきなり金回りが良くなったので理由を聞いたら
「うん、援交始めたの」
とアッサリ答えられた時には、正直言葉が出なかった。自分も立派に
「今時の女子高生」だとは思っていたが、
流石に「援交」までは手が出ない・・・・。
「だけど、そうまでしてお金を貯めてなにするの?」
シェイクを飲み干し、ひと心地ついている恵子に何となく聞いてみる。
「海外旅行に行きたいの! 豪華客船に乗って優雅な旅ってやつ、」
夢見る様な瞳で語る恵子。
「えー、でもそんなの何時行くの? 学校はどうするの??」
「だから夏休み前に資金を貯めちゃうのっ」
時は七月初旬。少女達が待ち望むバカンスの季節はもうすぐだった。

「あっ、もうこんな時間! 行かなきゃっ」腕時計を見た恵子がいきなり
立ち上がる。
「えっ、まさか恵子今から?」
「うんっ、さっき携帯にメールが入ってたの。26歳の商社マンだって。」
恵子の商魂とバイタリティに感心しながらも、友人の身が
心配になってしまう和江。
「でも大丈夫なの? そんな何処の誰とも分からない様なヒトと2人きりに
なって・・・」
「うん、ダイジョウブ、大丈夫っ、そう言う事が無い様に。
身元とかの証明がしっかり出来た人しか、メールが入らない様になっている
から、安心してよ。」
あっけらかんと答える恵子。
「そう・・・・じゃあもお何も言わないけど、気を付けてね。」
「うんっ、分かった。じゃあね!」
店のドアを開け元気に走って行く恵子の後ろ姿を不安げな表情で見送る
和江。


「こんにちわーっ。ケイコです! よろしくーーっ。」
待ち合わせの場所にいた青年に元気に挨拶をする恵子。
三つ揃いの背広を着込んだ、温厚そうな顔付きの青年は、ひとの良さそうな
笑顔を作り恵子に挨拶を返した。
「こちらこそヨロシク。君がケイコちゃんか、写真で見るよりカワイイね。」
「えへへーっ、そうですかー? じゃ、兎に角中に入りましょっ」
煽てられ気を良くした恵子は、青年が異常にあたりの人目に注意を
配っていた事に気付きもしなかった。


ギシッ、ギシッ、ギッ・・・
「へぇっ、そうっ、ケイコちゃんっ、海外旅行にっ、行きたいんだっ、」
恵子の腰を突き上げながら、途切れとぎれに話しかける男。
「うんっ、そうっ、やっぱっ、アメリカっ、とかっ、憧れっ、ちゃうしっ、」
男に突き上げられ自然と言葉が途切れてしまう恵子。
「じゃあっ、僕がっ、行かせてっ、あげるよっ、」
「えっ、ホントっ? イタッ」
腕に走った痛みに恵子が目を開けると、男の持った注射器が自分の腕に
刺さっていた。
「えっ? 何これ??」
今さっきまで快感に浸っていた恵子の思考は、その突然の事に対処
出来ず、薬を最後まで注入されてしまった。
「・・・・あっ・・・・・」
一瞬で意識が遠のき。ぐにゃり、と男の身体に倒れ込む恵子。
「ふふふっ、バカな娘だ・・・」
男はカバンから携帯を取り出すと
「こちら加藤だ、素体が手に入った。至急迎えに来てくれ。」
と手短に用件を伝えた。



一月後・・・

「起動試験を行うぞ。セクサロイド恵子00−1号の動力を入れてくれ。」
工作台の上に横たわったまま、ピクリともしない恵子の身体に
エネルギーが注入される・・・

「ピッ・ピピッ・・アッ・・・ココ・ハ・ドコ・・?・・」

ひと月振りに意識を戻された恵子は、自分の身体の感覚が
おかしくなっている事に気付いた。
手足がまるで自分のモノでは無い様な感覚。声も何かヘンだ・・・・。

「起動は成功の様だな。次は『命令コマンド』のテストだ。」
恵子の戸惑いなどお構い無しに、研究員に指示を出す加藤。

「・・アッ・貴方・ハ・・アノ・時・・ノ・・・」
加藤の顔を認識し、一月前の記憶がメモリーにロードされる。

「・・ワタシ・ニ・何・ヲ・・・」
と言いかけたトコロで恵子の身体は硬直した、命令信号が制御装置に流れ込み
意識を遮断する。
「まず、オナニーをさせてみろ。」
「はい。コマンド01を実行させます、」パチパチとコマンドを打ち込む
研究員。

「ピッ!」
恵子の意識とは全く無関係に身体が起き上がり、両手がむき出しの秘所に
のびる・・・。
くちゅっ、くちゅっ、セクサロイドとして設計された恵子のおま○こは
起動とともに潤滑液が分泌されていた為、いきなりいやらしい音を立て始める。

「・・アッ・・アッ・・アッ・・アッ・・・」
(・・ドオシテ・・ワタシ・コンナ・事・シタク・・ナイ・ノ・ニ・・・)
自分の意志とは関係なく襲って来る快感に、思わず声が出てしまう恵子。

「どうやら、欠陥は無い様だな。よし、明日の輸送便に搬入しなきゃ
ならないんだ、梱包作業急いでくれよ。」
恵子の様子を確認すると研究員に指示を出し、退出しようとする加藤。

「・加藤サン・・ワタシ・ドウ・・ナッタノ・・・?」

オナニーのポーズのまま視線まで固定された恵子は、既に視界から
いなくなってしまった加藤に声だけで問い掛ける。

「言ったろ? 俺がアメリカへ連れてっ行ってやるって。ただし
日本製の『SEX人形』としてなっ。ははははっ」

背中越しに加藤の冷たい返事がかえって来る。
「・・ソ・ソンナ・・ワタシ・[ロボット]・ニ・サレチャッタ・ノ・・?」
自分がロボットにされてしまった。そのあまりのショックに浸る間も無く。
恵子はスイッチを切られてしまう。



「・ピッ・・コンニチワ・・ゴ主人様・・私・ハ・恵子・デス・
・ドウカ・末長ク・可愛ガッテ・下サイ・・」
自分を買った主人に礼儀正しく挨拶をする恵子。

恵子を購入したのは、アメリカに本社を持った輸入業を営む中堅会社の
社長だった。彼は無類の日本文化好きで、色々な日本製品をコレクション
していたのだが、そのうち取り引き先の相手から「日本製SEX人形」の
事を教えてもらい、早速注文をしたのだ。

恵子を購入する為には高額な会員証を手に入れなければならなかったが。
目の前で可愛らしい笑顔を作り挨拶をする恵子を見て、
「良い買い物をした」と彼は満足げに肯いた。

「元は人間だった」と言う事は絶対にばれてはならない。それは恵子の
脳に直に刷り込まれた『最優先命令』だった。
もし発覚した場合は機密保持の為、頭部にセットされた高熱装置で
一瞬の内に脳細胞が蒸発させられてしまう。

「・・コンナ・身体・ニ・サレタ・ケド・・・デモ・・
死ヌ・ノハ・・・・イヤ・・・!」

元々プログラムによって「主人の命令には絶対に服従。一切の反抗を禁ず」
と全く自由の無い「操り人形」にされてしまっているのだ。
そのまま、主人に尽して可愛がってもらえる様に振る舞った方が
大事に扱ってもらえるかもしれない・・・・。

それが「SEX人形」にされてしまった恵子の唯一の希望だった。

ギシッ、ギシッ、ギシッ、
「・アッ・・アッ・気持チ・イイ・デス・・ゴ主人・サマッ・・
・・モット・・モット・・下サイ・・・」

主人の希望する体位、希望するヨガリ方、様々なプレイにも
笑顔で応じ、精いっぱい彼に尽す恵子。

彼もそんな恵子のいじらしさに愛着を感じ始めていた、

(最近・ゴ主人サマ・ハ・何ダカ・オ優シイ・・・
モシカ・シタラ・・ワタシ・コノ・ママ・・
大事ニ・シテ・モラエル・カモ・シレ・ナイ・・・・・)

単なる「SEX人形」として扱われていた恵子だったが、
そんな生き方にもほんの少しだけ希望を見出し始めていた。

だがそんな彼女の希望はあっさりと砕かれてしまう。
主人の会社が倒産してしまったのだ。
彼の全財産が差し押さえられ、次々と競りに掛けられる。
勿論恵子も例外では無かった。
ショックと整備不良の為、ろくに喋りもしなかった恵子は
信じられない程安く買い叩かれ、場末の売春宿で客を相手に
させられる事になる。

なにしろ「人間では無い」「ただのSEX人形」なのだ。
その料金の安さで一日に数十人の男達が恵子の身体を犯す。
それも、人間の女じゃ出来ない様なプレイを好むモノばかりが・・・・。


「・・・ビ・ビ・・・ガ・ガガ・・ア゛・・ア゛・・・ヴ・・・」
恵子が「壊れる」まで二ヶ月とかからなかった・・・。



二ヶ月後