コンバット・ドール開発史・プロトタイプ零号』

作 破李拳竜様


ドラマ協力/ MCマニア・Rui・人形者

イラスト/破李拳竜・ダイテツ


ATC・2


  ケイトは、村上博士から「さる問題が起こったから、私と同行してくれ!」と頼まれ、再度「ブラック・ベース」へ向かった。そしてまたあの横暴な軍人高官・岸田司令に顔を合わせると思うと憂鬱になる。また村上博士に無理難題を押し付けられるのだろうと考えてしまうからだ。
 応接室へ通されると、しばらくして岸田司令と4人の制服姿の女の子達が入って来た。そして相変わらずぶっきらぼうに
「彼女らがロリータ・カルテットだ。」
と4人の女の子達を紹介する岸田司令。すると4人の女の子うちの2人が「あら?あなた・・・。」とケイトに声掛けてきた。
「!?」となるケイト。・・・よく見たら、先日初めて「ブラック・ベース」へ来た時、場所が分からず迷っていた彼女に場所を教えてくれた若い女性隊員が二人だった。
「あ、・・・あの時は・・・どうも・・・」慌てて挨拶するケイト。即座に両サイド巻き毛の娘が「これから一緒にお仕事出来るのかしら?よろしくネ、私はミーチム・カリア。」と、勝手に自己紹介してきた。
「顔見知りなのか、良かったな。ではさっそく本題に入る。」会話に岸田司令が割って入り相変わらずぶっきらぼうに遮ると用件の本題を切り出した。
「さる企画に関してまずい問題が起こった。」そしてロリータ・カルテットの4人に向かい、「この企画は君達も知っておいたほうが良いので説明するが・・・。」
そして具体的な内容は村上博士から語られた。
「企画内容は、私が話そう。」そして博士はケイトを指して
「助手のケイト君、見本品を。」
「はい、村上博士。」云われてケイトは小型の機械と金属鋼を持ってくる。
「これは私が開発した、超コンパクト高出力エンジンと外板使用予定の超硬質軽量テクタイト合金だ。合金を蒸発させ、瞬時に急速冷却してガラス状に固めた物だ。」
ケイトが差し出したその金属は、まるで「透明感があるガラスのような金属」とも思える不思議な輝きを放っている。
「これらの物を使用し、ここの防衛軍との共同製作で我が社の先進技術の粋を集め、新型ロボット兵『コンバット・ドール』を近々製造するのだが・・・。」
「わあ、綺麗!こんなに美しい金属で造られるロボットって、是非見てみたいわあ〜。」
と、場の空気を無視して喋りだしたミーチムに、マリと呼ばれるリーダーの日本人女性が「シッ!」一瞥して黙らせる。それからまた説明は岸田司令の口からなされた。
「実はこの見本品が複製を取られてしまったらしいのだ。そこで君達に調べ、取り戻してもらう!」
 岸田司令はロリータ・カルテットの4人に命令を伝える。その様子を見て、ケイトは正直こんな女子学生みたいな娘達に作戦命令が勤まるのか?と不安に感じていた。

 だが数日後、事件は解決された。見かけによらず彼女らは優秀なんだなとケイトは少し感心する。そしてフト岸田司令が云っていた言葉を思い出した。・・・<この企画は君達も知っておいたほうが良いので>・・・とは、『コンバット・ドール』が完成した時は、彼女達をマスターとして、コンバット・ドールの操縦者にする予定なのだろうか?もちろんコンバット・ドールの製造と、使用目的は把握していても、具体的な作戦行動目的は聞かされてはいないし、民間人であるケイトにそれを知る権利も無い。

 「それにしてもコンバット・ドールの試作機製造は、全て他へまわされる訳ではなくて良かったですね。」研究所でケイトはそう村上博士に話した。「頭部の主要部分が他社製作となりましたが、それ以外では今まで通り私達で製造出来ますから。」
しかし村上博士の顔は暗い。
「ロボットは人間に役立つために造られ、人間に奉仕しなければならないのは当然だが、あくまでも精密な機械だ!人格を持ったり人間が自分と同じ姿の物を造る事は本来許されるべきではない!・・・岸田さん達日本人は宗教上の倫理観が甘いから、そういう部分が欠落しているんだ。」
「あら?博士も日本人じゃありませんか?」
「私は日系二世だし成人するまでアメリカ暮らしだった。それにちゃんと洗礼を受けたクリスチャンだよ。」
「そうでしたか、失礼しました。Dr・ジミー村上。」
そう言いながらケイトは、博士の悩みがやはり自分が思った通りだった事に少し安心したのだった。


 休日、ケイトは同僚の萩野舞子に誘われ、彼女の家にまぬかれていた。舞子の父親であり、ボピー社関連企業「萩野サイバネティック社」社長である萩野重蔵と、舞子の彼氏・猪川岩男も応接間でくつろいでいる。
「やっぱり博士、そーゆーコトで悩んでいたのね・・・。ゴメンネ、たしかにわたしも子供の頃からアニメで『アストロボーイ』とか『キューティーハニー』やら、そーゆースーパー・アンドロイド物観て馴染んでいたし、『人間が人間を創る』という事の問題性なんて、考えた事もなかったわ。」
と、少しは真面目に考えている様子の舞子。
「特にわたしはロボットと一緒に育ってきたから。」
と、舞子はTVのリモコンみたいな器具を手にするとスイッチを入れた。ブーン・・とモーターの作動音をさせながら女性型ロボットがやって来る。全身グラスファイバーと軽合金製の動くマネキン人形というか、関節部に継ぎ目の付いた等身大可動人形という感じの物だ。頭部は美しい女性の顔が造型されている。
「イラッシャイマセ、オ客様。」
コンピューター・ボイスの女性の声でそのロボットは挨拶した。
「やだあ〜ママ、ケイトの事、忘れたのォ?」
「舞子がママにケイト君を認識させるのを忘れたんじゃないのか?」
と、萩野社長。
「あ、そーか、・・・ママ、彼女はケイト・パトリクス。わたしのお友達よ。認識しなさい。」
「カシコマリマシタ。マスター舞子サマ。・・・ビッ!ケイト・パトリクス様ヲ認識・メモリー登録シマシタ。」
と、メモリー処理の間、停止後再び駆動音をさせて動き出すこのロボットは、舞子が子供の頃若くして死んだ母親・萩野一美に模して造られ、舞子へプレゼントされた物だそうだ。
 舞子の父・重蔵は、「たしかにコレを造った時はケイト君が言うような事は考えてはいなかったが、その後私も深く倫理観を考え、結局人型ロボットはこの『KAZUMI2107』一体だけで終わりにしたよ。」
と答える。するとロボット『KAZUMI2107』を眺めながら、話の流れを無視したように岩男が口を開く。
「舞子のママって、本当に美人だったんだなあ・・・。」
「そうよ、わたしが子供の頃から全然変わってないわよ、ロッキー。・・・なあに、ママに浮気〜?」
彼氏の名前が『岩男』だから『ロッキー』と呼ぶのは舞子らしいとケイトは思った。ガッチリした体格で朴訥な青年・猪川岩男は学生時代はブラジリアン柔術のインターハイ選手だった。だから舞子はケイトや同僚達から『彼氏に防衛軍が徴兵に来るぞ!彼氏を防衛軍に取られるぞ!』とか冷やかされたものだったが、素直で真摯な岩男の誠実さが認められ、舞子の父・重蔵公認の彼氏となり、邸宅へも顔を出せる身となったのだった。

 休日明け、ケイトは再び村上博士の代理で防衛軍基地「ブラック・ベース」の岸田司令の元へ向かった。しかし今度は自分一人であの傲慢横柄な軍人に逢わなくてはいけないと思うと毎度の事に加え、更に憂鬱な気分になってくる。
 広い基地内とはいえ、今度はスムーズに長官室へ辿り着けた。ドアをノックしたケイトは事務的に声を掛ける。
「村上博士の代理で『ボピー社・開発科学部』の『村上研究室』から来ましたケイト・パトリクスです。入ってよろしいでしょうか?」
するといつになく慌てた岸田司令の返事が返ってきた。
「ちょ、ちょっと待ちたまえ、お、おい・・・!」
そう聞こえた後、ドアが開くと何と!小さな子供が飛び出して来たではないか!「!!」驚くケイト。子供は小学生くらいの少女でチャイナ服、中国拳法の試合で観る競技服を身につけていた。
「あ、あなたは・・・?」
 軍隊基地の、しかも長官室から拳法競技服姿の少女が現れるとは・・・あまりに場に不似合いで意外な出来事に、ケイトは思考停止寸前になりながらそう呟くように少女に尋ねる。すると少女ははっきりした口調で答えた。
「わたし、李燕雲。」



戻る