『星に歌えば』

作karma様




第1話 夢への一歩


桜井葉留香は、ホバーカーのアクセルを踏み込んだ。
「今日も遅刻だわ。柿谷講師に大目玉よ。ワープ航法学の単位がもらえないわ。」
葉留香は、宇宙パイロット訓練校の訓練生だった。連日の遅刻で、今度遅刻したら単位を出さないと、柿谷講師に脅されていた。
後、数カ月で卒業というときに、必須科目の単位を落としたくなかった。
安全運転とは言えないスピードで数台のホバーカーを追い越したところで、前方のホバーバス停留所に3台のホバーカーと人だかりが見えた。
葉留香はそのホバーカーに見覚えがあった。このあたりを本拠地にしている不良グループのものだった。
「あいつら、また何か悪さをしているな。」
いつもの葉留香ならホバーカーを止めて、不良グループを注意するところだった。だが、今日は事情が違った。
「今日は見逃そう。」
そう思って、バス停を通り過ぎたとき、不良グループに囲まれている老人の姿が見えた。
通り過ぎた後、バックミラーで確認すると不良グループの一人が老人の胸ぐらを掴んでいた。
「あいつらを蹴散らしてから、すぐに出発すれば、間に合うかな。」
葉留香は、頭の中で微妙な時間計算をすると、ホバーレーンを外れて、バス停に向かった。
バス停に着くと、すぐに降り立ち、不良どもに一喝した。
「こら!あんた達、年寄り相手に何やってんの!」
「うへっ。葉留香だ。」
「何だよ。今日は、俺たちが悪いんじゃないぜ。じじいの方が喧嘩をうってきたんだ。」
老人は不良達に囲まれても、全く気後れした様子がなかった。
「ふん。こいつらが公共のバス停を占拠しとったから、注意しただけじゃ。」
葉留香は、呆れた。いまどき、そんなことで不良どもを注意する人間はいない。
バス停を占拠する位は、この辺りの不良にとっては、極めて大人しい行為である。
「と、とにかく、お年寄りはいたわるものよ。きっと田舎から出てきて、都会の事情を知らないのよ。今日は、あたしに免じて、引き上げて。」
「葉留香の頼みじゃ、しょうがねえな。じじい。葉留香によく礼を言っときな。」
不良グループは、高らかにクラクションを鳴らしながら、ホバーカーに乗って去っていった。
不良達が去ると、老人はバス停の床面に落ちた帽子を拾った。その間に葉留香はホバーカーに向かおうとした。老人が葉留香を呼び止めた。
「娘さん。ちょっと待ってくれ。」
「おじいさん。お礼の言葉なら、いらないわ。あたしは、人助けが趣味なの。」
「いや、そうじゃなくて、儂を宇宙港まで送ってくれ。」
「何ですって?」
「不良どもに絡まれておったら、宇宙港行きのバスが行ってしまったんじゃ。儂の乗る宇宙船は今度の便を逃すと、3日後じゃ。」
「おじいさん、ごめん。いつもなら、送ってあげるところだけど、今日は特別なの。」
「そうか。やっぱり、お前さんも不良どもと同じか。」
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないでよ。」
「こんな年寄りを、身よりのない地球に3日も残れと言うなんて。」
葉留香は、ため息をついた。
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結局、葉留香は老人を乗せて宇宙港に向かった。
「娘さん。すまんのう。急ぎの用があったんじゃろう。」
「いいえ。宇宙パイロット訓練校の単位がもらえなくて、卒業が1年延びるだけよ。大したことないわ。」
葉留香は、頬をヒクヒクしながら、笑っていた。
「それは、悪いことをした。どこの訓練校かな?儂が後で謝っておこう。」
「そんなことしなくていいわ。うちの講師、頭堅いから、無駄になるだけよ。」
「それでは、儂の気が済まん。頼む、教えてくれ。」
「グリーンリバー訓練校よ。本当に、いいのよ。いままで遅刻し続けたあたしがいけないのよ。学費を稼ぐのにバイトであけくれてたから。」
「学費を自分で?ご両親に援助してもらえないのか?」
「あたしの両親は、3年前に火星ゲリラのテロで亡くなったわ。」
「そうか、では早く卒業したかったのだな。悪いことをした。」
「気にしないで。どうせ、今年卒業しても、希望のところには行けないから。」
「娘さんの希望は何処かな?」
「宇宙軍よ。軍のパイロットになるのが夢だったの。」
「なぜ、宇宙軍に?」
「この太陽系に平和を取り戻したいの。両親のような悲劇を終わらせたいの。」
「なるほど。何が問題かな?成績か?」
「成績も実技も問題ないわ。そう言うことではなくて、宇宙軍に入隊するには軍の少佐以上の推薦がいるのよ。」
「なんと。地球ではそんなことになっておるのか。」
「そうよ。」
宇宙港へ着くと、老人は出発ゲートを探し始めた。
「おじいさんは、何処行きの船に乗るの?」
「ドルゴール星じゃ。娘さん、ありがとう。最後に名前を教えてくれんか。」
「あたしの名前は桜井葉留香よ。」
「儂の名前は、山本敬介じゃ。世話になったな。」
「また、地球に来たらいつでも連絡して。」
山本敬介を見送ってから訓練校に行くと、案の定、柿谷講師からみっちり怒られた。
「桜井さん。いくら試験の成績がよくても、こう、毎日遅刻するようじゃ単位はあげられないわ。」
「すみません。以後気を付けますので、お許しください。」
「だめよ、絶対ゆるさないわ。」
怒られている途中で、葉留香と柿谷講師に校長から呼び出しがあった。
「どうやら、校長の耳まで届いたようね。」
葉留香は覚悟を決めた。
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「桜井訓練生、呼び出しにより参上しました。」
「柿谷講師、呼び出しにより参上しました。」
桜井と柿谷は、校長の前で敬礼した。
「うむ。二人ともそこに掛けてくれ。」
葉留香と柿谷講師は、校長の示した椅子に座った。
「二人を呼んだのは他でもない。桜井君の単位のことだ。
柿谷君は桜井君に単位を出さないと言っているようだが、成績の問題かな?」
「いえ、桜井さんは、確かに成績優秀です。ですが、連日遅刻で授業態度に問題があります。 今日も厳重に注意したのに、また、遅刻です。」
「桜井君。そのことについて弁解はあるかね?」
「いえ。ありません。」
「校長。いくら成績優秀でも授業態度が悪い生徒には単位は出せません。」
「実は桜井君の遅刻について、今日ある人から連絡があった。
不良に絡まれているところを助けてもらったうえに、宇宙港まで送ってもらい大変感謝しているそうだ。」
山本敬吾が訓練校に連絡したのだと葉留香はすぐ判った。
「そんな、他人に親切にすることと単位とは別です。そんなつまらない連絡を入れてきたのは誰です?」
「校長、私が遅刻したのは事実です。柿谷講師の判断に従います。」
「そうもいかん。連絡があったのはドルゴール星宇宙軍の山本司令官だ。」
「なんですって?」
「ドルゴール星と言えば、親会社の緑川スペースシップの得意先だ。
くれぐれも個人的な感情で優秀な生徒の可能性を潰さぬようにとの山本司令官のお言葉だ。」
柿谷講師は、葉留香をにらみ付けた。
「どうやって取り入ったか知らないけど、うまくやったわね。校長の指示ならしかたないわ。
単位は出すわ。でも、これからも、順調に行くとは限らないわよ。」
「柿谷さん。誤解です。」
柿谷は葉留香の弁解を聞かず、立ち去った。
「校長。あたし、山本さんがそんな偉い人とは知らなかったんです。」
「うむ。それは判っている。山本司令官は、地球では身分を明かしていなかったそうだ。
それでも君に親切にしてもらったことを感謝していたとのことだ。」
「でも、柿谷講師との約束を破ったのは事実ですから、やはり、単位は返上します。」
「山本司令官は、君の宇宙軍入隊も推薦してくれたんだよ。」
「本当ですか。」
「どうかね。これでも単位を返上するかね?」
今卒業できれば自分の夢だった宇宙軍のバイロットが実現すると思うと、葉留香の心は揺れた。
「判りました。柿谷講師にはよく謝っておきます。」
葉留香が校長室を出ようとドアを開けると、反対に女性が入ってきた。葉留香は、その顔に見覚えがあった。
「玲子じゃない?懐かしいわ。どうしたの?」
「葉留香?久しぶりね。でも、ごめん。ちょっと校長と大事な話があるの。後でね。」
「判ったわ。じゃあ、後でね。」
校長室をでると、宇宙軍の制服を着た背の高い男がいた。訓練校を去年卒業して宇宙軍に入隊した甲斐芳博だった。
「おい、葉留香!」
「芳博!」
葉留香が小走りに近づくと、甲斐は葉留香をぐっと抱き寄せた。
「ちょっと、人が見てるじゃない。」
「いいじゃないか。俺たちの仲じゃないか。」
迴りの視線を気にして、葉留香は甲斐の手を解いた。
「どうしてここに居るの?」
「緑川スペースシップの依頼で、緑川玲子をここに連れてきたんだ。宇宙軍の新型宇宙船のクルーを探しているそうだ。」
「校長と大事な話って、そのクルーのことね。でも、訓練校にクルーを探さなきゃいけないほど、宇宙軍は人手不足なの?」
「そんなことはないけど、緑川はクルーの人材にこだわりがあるみたいだ。自分で全て設計した船だからな。」
「玲子が宇宙船の設計?彼女、確か医学専攻だったはずよ。ワープ航法の基礎も知らない彼女に設計できるのかしら。」
「さあな。よく知らないが、今は、緑川スペースシップの技師長だそうだ。
今度納入する宇宙船には、彼女が開発した完全自動操縦技術を使うらしい。」
「玲子が技師長?完全自動操縦技術?信じられないわ。」
「とにかく、今度の卒業生の中から目ぼしい人材を探したいらしい。葉留香、お前も候補だぜ。」
「えっ。あたしが?」
「おまえも無事、卒業できるそうじゃないか。さっき柿谷女史が玲子に話していたぞ。 葉留香、柿谷女史に圧力をかけて単位をとったんだって?」
「ううん。そうじゃないの。」
葉留香は、校長室での出来事を甲斐に話した。
「よかったじゃないか、葉留香。宇宙軍でまた一緒になれるな。」
「ええ、そうね。」
「浮かないな、葉留香。俺と一緒になるのが嫌なのか?」
「軍に入隊して、芳博と一緒になれるのは、嬉しいけど、柿谷講師の面子を潰してしまったのが、気になっているのよ。」
「大丈夫。あんなやつ、放っておけばいい。」
「そうかしら。」
「そうさ。それより、これから何処か行かないか?」
「ごめん、今日はこれから、コーラス部の練習があるの。卒業式で『星に願いを』を歌うのよ。」
「葉留香の好きな歌だったな。20世紀に流行った歌だろ。」
「そうなの。あたし、子供の頃からこの歌が好きで、卒業式で歌おうって言い出したのはあたしだし、 コーラス部の部長だからサボれないのよ。」
「わかった。また、今度にするよ。」
そこへ緑川玲子が校長室から戻ってきた。
「さっきは、ごめんね、葉留香。」
「いいのよ。校長との話は済んだの?」
「ええ。なんとかなりそうなので、ホッとしたわ。」
「新型船のクルーを探しているんだって。芳博から聞いたわ。」
「校長から卒業予定者のリストを貰ったの。これからじっくり選ぶわ。ところで二人で何話してたの?デートの相談?」
「そう思ったんだけど、葉留香にフラれたよ。」
「ごめんね。今度必ず埋め合わせするから。」
「じゃあ、葉留香に代わってあたしが甲斐君を慰めてあげる。」
玲子は甲斐の腕に自分の腕を絡ませた。
「そうするか。じゃあな、葉留香。」
「後で電話するわ。」
「ああ、待ってるよ。」
葉留香は、手を振って二人を見送った。
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グリーンリバー訓練校の卒業式が盛大に行われた。
柿谷からまだ許してもらえてないのが気がかりだが、葉留香は憧れの宇宙軍に入隊できる喜びで胸が一杯だった。
「それでは、最後にコーラス部により、『星に願いを』を合唱します。」
葉留香達の歌声が卒業式会場に響き渡った。葉留香は自分の喜びを精一杯歌声にのせて歌った。
会場から一斉の拍手を受けて、退出すると、葉留香は校長から呼び出された。
「何だろう?」
心当たりは無かったが、取りあえず校長室に行くと、緑川玲子と、副司令官の階級章を付けた宇宙軍の制服を着た人物が居た。
「桜井訓練生、呼び出しにより参上しました。」
「桜井君、紹介しよう。こちらは、緑川玲子さん。緑川スペースシップの完全自動操縦船の設計主任だ。
緑川スペースシップの緑川武則社長のご令嬢でもある。」
「校長。葉留香にあたしの紹介は不要よ。実は、あたしと葉留香とは高校の同級生なのよ。」
「緑川さん。お久しぶりです。」
「他人行儀は止めてよ。いつものように玲子でいいわ。」
「それなら、話は早い。それから、こちらは地球宇宙軍の金田副司令官だ。」
「桜井葉留香です。よろしくお願いします。」
「金田です。いやぁ、緑川君から聞いていたが、きれいな方だ。」
「葉留香は、高校時代、男子に人気があったのよ。顔だけじゃなくて、着痩せしてるけど、本当はスタイルもいいのよ。」
「玲子さん。そんなことここで言わなくても。」
「ごめんなさい。そうだったわね。じゃあ、早速本題に入りましょう。」
「桜井君。実は緑川さんから、今度、宇宙軍に配備される新型宇宙船のクルーとして君を依頼されているのだ。」
「あたしが?訓練校を卒業したばかりなのに。宇宙軍の中にもっとふさわしい方がいらっしゃるのではないでしょうか。」
「いくら完全自動といっても、パイロットの素養の無い人にクルーになってほしくないの。 いつでも船を操縦できる人にクルーになってほしいの。
あなた、学科も実技もトップだそうじゃない。あなたなら大丈夫って柿谷講師も推薦してたわ。」
「柿谷講師が?」
「そうよ。」
以外だった。てっきり、柿谷には嫌われているものと葉留香は思っていた。
「どう?あたしのお願いをきいてくれないかしら。」
「判りました。どこまで、できるか判りませんが、精一杯頑張ります。」
「ありがとう。」
そこへ、金田が割り込んだ。
「とは言っても、訓練校を卒業したばかりの君をパイロット経験者と見なす訳にはいかん。
君の実力は話には聞いているが、この目で確かめたわけではない。というわけで、君のパイロット技能テストを実施する。
場所は火星、時間は120時間後だ。」
「判りました。早速、準備します。」
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葉留香が火星宇宙港に着くと、金田と玲子が出迎えてくれた。
「フライトはどうだった?」
「シートに座ったまま、50時間過ごすのは疲れるわ。」
「お疲れのところ、申し訳ないか、早速、君に見て貰いたいものがある。」
「何ですか?」
「建造中の完全自動操縦船よ。あなたの乗る船よ。」
「判りました。どんな船なのか、あたしも見てみたいですわ。」
葉留香は金田とともに、玲子が運転するホバーカーで、宇宙船建造現場にやってきた。
「これが完全自動操縦船よ。」
「うわぁ。大きい!」
巨大な楕円形の新型船を見上げる葉留香と玲子に一人の男が近づいてきた。
「技師長。ちょっと、ご相談が。」
「何?香川。」
「以前から不調だった船の中央処理装置ですが、先程、技師長のプログラムをインストールしましたら、えー、壊れました。
作業を中断した方がいいでしょうか?」
「大丈夫よ。替わりを見つけたから。」
「そうですか。では、続行します。」
「香川?もしかして、高校の時、同学年だった香川秀一君?」
急に、フルネームで呼ばれて驚いて葉留香の顔を見つめた。
「桜井葉留香さん?」
「ええ、そうよ。思い出してくれた?」
「葉留香、どうして香川のこと知ってるの?同級じゃないし、部活も違うでしょ。」
「うん、ちょっとね。」
「なに、その歯切れの悪い答えは。」
「私が同級生からイジメを受けていたとき、助けてくれたんですよ。」
「そうだったの。」
「ところで、桜井さん。今日はどうしてここに?」
「この新型船のクルーの採用試験を受けにきたのよ。その前に玲子の案内で新型船を見学するのよ。」
「えっ?じゃあ葉留香さんが、あの・・・」
そのとき、玲子は香川を睨んだ。
「香川。無駄口叩いてないで、さっさと仕事をすませてちょうだい。ただでさえ、遅れているんだから。」
「す、すみません。技師長。」
香川は、あたふたと葉留香に別れを告げた。
「そ、それじゃ、葉留香さん気を付けて見学してください。船内は暗いところが沢山ありますから。」
「ええ。ありがとう。」
「香川君!ぐずぐずしないで。」
「すみません。ただいま、持ち場に戻ります。」
香川は、何か言いたそうに、葉留香をちらちらと見ながら、去っていった。
「何も、あんなに怒らなくたって。」
「いいのよ。彼には少しきつく言うぐらいがちょうどいいのよ。全く、仕事が遅いんだから。」
玲子は、未練そうに振り返る香川を睨み付けていた。
「さあ、葉留香。船内を案内するわ。」
葉留香は玲子の後に付いて、乗船用のエレベータに乗った。
「ここがキャビンよ。向こうに見えるのが客室。」
「船は大きいのに、意外と客室が少ないわね。」
「本来の目的は、軍の物資の運搬なの。だから、船内のほとんどが倉庫で、客室はおまけなの。」
「なるほどね。」
キャビンの奥へ進むと、正面に大きなスクリーンのある部屋があった。スクリーンの下はポッカリと空洞になっていた。
葉留香と玲子はその空洞の前に並んだ。
「ここが、操縦室よ。」
「この空洞は何?」
「メインコンピュータが入る空間よ。」
「へーっ。船の全てを管理するんでしょ。意外と小さいわね。」
「ええ、設計に苦労したけど、画期的な方法を思いついたの。」
「全て自動で宇宙船を操縦するなんてすごいわ。そのうち、パイロットはいらなくなっちゃうわ。」
「そうでもないわ。メインコンピュータが入手困難なのよ。壊れやすいし。まだ宇宙中で2機しかないわ。」
「そっか。これが3機目なのね。それじゃあ当分、パイロットが要らなくなる日は来ないわね。
でも、できれば、自分で操縦する船に乗りたかったな。」
「大丈夫よ。葉留香はこの船を操縦できるわよ。」
「メインコンピュータが故障したときだけでしょ。」
「ちがうわ。この船を操縦するのは葉留香よ。」
「えっ、この船、コンピュータが操縦するんじゃないじゃの?」
「そうよ。葉留香がメインコンピュータなのよ。」
「何を訳の判らないこと言ってるの?。」
葉留香が玲子の方に振り返ろうとした途端、首筋に圧力を感じた。
玲子の手には圧縮空気式の注射銃が握られていた。
「何するの?」
首筋を押さえながら、意識を失って床に崩れる葉留香を玲子は冷ややかに見おろしていた。


第1話 終



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