『マシンチューニング』

作karma様




第3話 マシンの操縦


翌朝、大型のトラックが藍沢ロボット製作所にやってきて、大きな荷物を降ろしていった。
修司は、工場の整備室をしばらく占拠することにした。
部屋を片づけ、荷物を搬入した。従業員に極秘の仕事だからといって、立ち入り禁止の札を掛け、整備室に隠って、準備を始めた。
まず、ロボットの胴と腕脚を梱包材の中から取り出し、内容物リストと照合した。
「このロボットのIDはAK001か。やっぱり、頭はないな。」
修司はロボットを組み上げると、そのボディをまじまじと眺めた。
「何度見ても、きれいなプロポーションだなぁ。どんな顔してるんだろう。」
薄暗い整備室に立つ首なし女性の均整のとれた美しい裸体像はそれだけで妖しい雰囲気を漂わせていた。
修司は、魅入られそうな自分を叱咤し、コンピュータを組み立て始めた。
AK001の頭脳の外部仕様書を見ながら、緋川から貰ったプログラムをベースにエミュレータを組み始めた。
丸一日掛けてエミュレータプログラムを組み上げ、デバッグを繰り返した。デバッグが終わった頃には夜が白々とあけてきた。
修司は、ベッドに入ると爆睡を始め、目が覚めると夕方だった。
カップラーメンで簡単な食事をとった後、コンピュータ背面の集合端子にケーブルバンドを接続し、一つ一つのケーブルを確認しながらAK001の首に接続した。
「いよいよだ。」
コンピュータを起動すると、ディスプレイにはロボットの3Dモデルが表示された。
それは、円筒形と球形を組み合わせただけの簡単なモデルだったが、実物と同じように頭部がなかった。
修司が、ディスプレイ下部の起動ボタンをクリックすると、AK001のボディから軽いモーター音が聞こえた。
同時に、3Dモデルの横に無数の数字が表示された。
「よっしゃあ。成功だ!」
修司は、飛び上がって喜んだ。
本来このボディを動かすはずのAK001の頭脳の代わりに、自分がこの美しいボディを好き勝手に動かせると思うとぞくぞくした。
「まず、腕の上下。」
マウスで3Dモデルの右腕を上下にドラッグするとAK001の右腕も上がったり、下がったりした。同じように左腕も上げ下げしてみた。
「静止バランス。」
左右の脚で片足立ち、Y字バランスを試し、閉脚倒立、開脚倒立を繰り返し、AK001の様子を前後左右から見ながら、修司はバランスを検討した。
AK001を分解して、内部機器の位置を調整した。
「次は、歩行のバランスだ。」
修司が歩行ボタンをクリックすると3Dモデルが歩行の動作をし、同時にAK001が歩きだした。
ケーブルの長さには充分余裕をとっていたが、同じ方向に歩き続けていたために余裕が無くなり、ケーブルに引っ張られて、AK001はバランスを崩し、後ろへドシンと倒れた。
だがAK001は、仰向けのまま歩行の動作を続けていた。
「あわわ。大変だ。」
修司は慌ててエミュレータを操作してAK001を停止し、ボディを起こし、ケーブルを繋ぎなおした。
「円周上を歩行するようにすべきだな。」
エミュレータの修正後、再度、歩行を開始した。
円周をグルグル歩行するAK001の、左右前後の揺れを確認し、AK001の関節をバラして中のサーボモーターの出力や応答速度、衝撃吸収性を調整しては再度歩行させるという作業を繰り返した。
歩行が終わると、ジョギング、ランニングへとスピードを上げて、再度ボディのバランスを調整した。
次に重量物テストをして、AK001の手に5Kg、10Kg、20Kgと徐々に重い鉄アレイを持たせて、腕で上げ下げした。
「よし。バランス調整は大体、終わったな。次は、感覚機能の調整か。」
AK001のボディを上から順に探子棒で押していった。
エミュレータは、3Dモデル上に赤い点で検出位置を表示し、触覚センサーが検出した力の値を触覚サブウィンドウに表示した。
修司は、探子棒に表示された値と一致することを確認した。
「うむ。誤差範囲内で、一致しているようだ。」
足先までテストして、各センサーの感度を検討した。
「やっぱり、乳首とかあそこはもう少し感度を上げるべきだな。」
エミュレータから皮膚のセンサー感度を調整してから、修司は少し休憩した。
「さて、いよいよ性感テストか。まずは、バストだな。」
ロボットとはいえ、女性の身体を触るのは照れくさかった。
乳房を揉むと、胸がドキドキして、股間が自然に膨らんできた。
「仕事。仕事。」
修司は自分に言い聞かせた。
AK001の外観には何の変化もないが、ディスプレイには性感サブウィンドウが立ち上がっていた。
そこにはBNCVの文字が付いたインジケータが出現し、検知した刺激データをステレオの音量のようにバーの長さとして表示していた。
「ちゃんと感じているようだな。」
つぎに、乳首を摘むと、Nインジケータのバーの長さが加えた力とともに変化した。
刺激しつづけると、最初青だったNインジケータのバーの色が緑、黄色、オレンジと変化した。「そろそろだな。」
バーの色が赤くなるとAK001の乳首が屹立しはじめた。
「乳首の反応OK。次は性器テスト。」
CインジケータとVインジケータのバーの色はすでに黄色まで変化していた。股間では秘唇がぬめりをおび、真珠のような突起を覗かせていた。
その突起を指でグリグリといじり、秘孔に指を入れて刺激を与えると、CインジケータとVインジケータが、それぞれに与えられた刺激を表示した。
Vインジケータのバーの色が赤く変化するとエミュレータは、AK001ボディの受けた刺激に対し、潤滑液の分泌信号の送信を開始した。
潤滑液は、修司の指を濡らし、更に太股の内側を伝っていった。
「そろそろいいかな。」
修司は円筒状の器具を取りだし、AK001の性器に挿入した。Vサブウィンドウの数値が激しく変動した。
修司がエミュレータを操作すると、AK001の股間がキュッと締まった。円筒形器具に付いたゲージの針が振れた。
「ちょっと強すぎるな。これでは悶絶してしまう。」
腹部のハッチを開けて、調整を終え、再度、テストした。
「よし、性的反応もOKだ。」
ようやく全てのチューニングを終えた修司は、少し休憩するつもりでベッドにはいったが、熟睡してしまった。
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しばらくして、二人の若い工員が整備室のドアをノックした。
「社長、済みません。書類にハンコください。」
呼んでも返事がないので、工員たちはドアノブを回してみた。鍵を掛け忘れたようでドアはスンナリ開いた。
「社長。いらっしゃいますか?」
返事のかわりに、修司のいびきがきこえた。
「社長、寝ているようだ。」
「おい、これ見ろよ。」
「すげえ。首なしのダッチワイフか。」
「見ろよ、このうまそうなオッパイ。しゃぶりつきたくなるぜ。」
工員が、AK001の乳房を鷲掴みにすると、それだけで身体を震わせ始めた。
「おっ。こいつ、一人前目に感じてるぜ。」
「おい、俺にも触らせろよ。」
何やら騒がしい声で修司が目覚めると、若い工員たちが、AK001を玩具にしていた。
一人が脚をかかえ自分の股間の上に乗せ、もう一人が後ろから胸を揉んでいた。
乳房は荒々しく捏ねくり回され、乳首は屹立して指の間から飛び出していた。
股間からは欲望の白濁液が溢れていた。
「おおっ、すげえ。よく締まるぜ。本物の女より気持ちいいぜ。」
「オッパイも柔らかくて揉み心地がいいぜ。」
「太腿の感触もムチムチだ。」
「くそっ。社長の野郎、立ち入り禁止で何してるかと思ったら、こんな玩具であそんでいたのか。」
AK001は二本の脚を足先までピンと伸ばし、身体がえびぞりになりながら、工員の腰の動きとともにピクッ、ピクッと動いていた。
エミュレータのディスプレイには、BNCV全インジケータのバーは赤くなり、狂ったように変動していた。
実際の性行為に対応するようプログラムされていないエミュレータは、状況に対応できず、画面中を警告ダイアログで埋め尽くした。
声を出せないAK001が悲鳴を上げているようだった。
修司は、その光景にカッとなった。
「こらっ、お前ら!何してるんだ!」
「あっ、社長。社長を探してこの部屋にはいったら、こんな色っぽいロボットが置いてあるもんで、ついムラムラっと。
このロボット、いい身体してますね。何回やっても飽きないっすよ。」
「社長、大目に見てくださいよ。従業員への福利厚生と思って。」
「馬鹿野郎!これは大事なお客からの預かりものだぞ。」
「えっ、そうだったんですか。す、すんません。社長の遊び用かと思ったんで。」
若い工員たちはロボットを放り出して、慌てて逃げるように外へ出ようとした。
「こら!自分たちの汚れをきれいにしていけ!」
工員たちは、叱られてすごすごとAK001のボディを専用の布できれいに拭き、秘孔を器具で広げ、洗浄ノズルを挿入して自分たちが出した残滓を洗い流した。
「エミュレータを濡らすなよ。精密機械だからな。」
工員たちが去った後も、修司は、自分でAK001のボディをきれいに拭き、秘孔を念入りに洗浄した。
「まったく、あいつら何をするかわからんな。裸で置いておいたのがまずかったな。
服を着せておくか。たしか、姉ちゃんの服が残っていたはずだ。」
自宅から響子の服を持ち出し、AK001に着せてみた。
「首を通す服は無理だな。」
ブラウスとスカートを着せ、ハイヒールを履かせると、サイズがぴったりだった。修司は、ふと思いついた。
「ファッションショーみたいにモデルウォークさせてみよう。」
修司は、モデルウォークボタンを作り、そこにAK001に与える命令を定義した。
ボタンをクリックすると、AK001はファッションモデルのように歩きだし、ケーブルが延びきる寸前に停止してポーズを作り、ターンして、再びモデルウォークを始めた。
修司は飽きるまで見ていた。
また、ふと思いついた。
「下着ショーはどうかな。」
すっかり、当初の目的を忘れ、AK001を裸にして、服の山の中からブラジャーを見つけて、AK001の胸に着けてみると隙間無く乳房にフィットした。
「姉ちゃんのブラジャーが、ぴったりだ。サイズは幾つなんだろう。」
修司はブラジャーを外して確認すると驚いた。それは響子のオーダーメイドのブラジャーだった。
「そういえば、姉ちゃんは服に凝っていて、ほとんどオーダーメイドだったな。」
確認してみると、さっきのスーツもブラウスもオーダーメイドだった。
「つまり、このAK001は姉ちゃんの身体をモデルにしてるということだ。」
それ自体は不思議ではない。響子は、弟の目から見ても、プロポーションのいい体型をしていた。
「なぜ、緋川会長は俺に黙っていたんだろう。」
修司はAK001の皮膚が気になり始めた。
「皮膚培養で、こんな複雑な形状を一枚もので作ることは難しい。だけど、生きた人間の皮膚をそのまま使えば、簡単だ。」
修司はAK001の顔を確認しなくてはと思い始めた。


第3話 終



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