『マシンチューニング』

作karma様




第4話 マシンの正体


修司は、AK001を分解して、丁寧に木箱に梱包し、緋川邸にやってきた。
「緋川さん。これが試験成績書と処置対策リストです。」
緋川は、修司が提出した試験成績書と処置リストを一枚一枚めくって確認した。
「うむ。よくやってくれた。」
「じゃあ、検収書にサインを下さい。これが請求書です。」
「金は来月口座に振り込むよ。」
「ありがとうございます。」
その後、修司は帰る振りをして、車を近くの森の中に置き、車の中で仮眠をとった。
タイマーのアラームで起き上がり、あたりが暗くなっていることを確認すると、黒い服に着替え、緋川邸に戻ってきた。
門扉を確かめると、今度は鍵が掛かっていた。修司は、電卓に鍵先のついたようなものを取り出した。
修司が作った万能鍵だった。門扉の鍵穴に差し込み、いくつかボタン操作すると、ピピッと音がし、鍵先を回すとロックが外れた。
屋敷の入り口も同様に開けて、修司は入口ホールの階段下の空間に身を潜めた。
昼間来たとき、そこがホールから死角になっていることを確認していた。
しばらく様子を伺っていると、エレベータが動く音がした。ホールを見渡してもエレベータらしきものは無かった。
音が止まると、ホール正面にある、銀色の女性型ロボットが描かれた大きな絵画が横にスライドした。
二人の研究員が、AK001を梱包した木箱を外へ運び出すのが見えた。
「あそこがエレベータか。」
研究員が立ち去ると、修司は階段下の空間から這いだして、エレベータに向かった。エレベータに乗ると地下のボタンがあった。
ボタンを押して地下に降り、ドアが開くと、薄暗い中に、様々な装置類が見えた。そこは何かの研究室のようだった。
部屋の奥から、女性の喘ぎ声が聞こえた。
装置の影に身を隠しながら様子を伺うと、大きなテーブルの上に首なし女性の裸体が仰向けに寝ていた。AK001だった。
AK001は、乳房をロボットアームに掴まれ、乳首は吸引ノズルで吸われていた。股間には別のロボットアームがバイブレータを挿入していた。
「アウッ。アアッ。」
喘ぎ声は、AK001の首の先に上から吊られていた首だけの女性から聞こえていた。
首の下から無数のケーブルとチューブが延びてAK001の首と接続されていた。
「あれがAK001の頭だな。暗くて顔がはっきり見えないな。」
そのAK001の様子を見ながら、研究員が記録を取っていた。
「うお。やっぱりボディを責めるほうが、責め甲斐があっていいな。おい。AK001、感じるか?」
「アウッ。ハイ、トテモ感ジテイマス。快感強度ノタメニ生体脳ノ意識活動ガ限界ニ近ヅイテイマス。」
「おい。もう、イッちまうのかい。まだ、30分しか立っていないぞ。おまえは、これから毎日俺たち全員の相手をするセックスロボットだぞ。
この程度でイッてしまうようじゃ、困るぜ。俺が、お前のヤワな生体脳を鍛えてやる。」
研究員が、パネルを操作すると、ロボットアームが形の良い乳房を機械の力でひょうたんの様に変形するまで思い切り掴み、吸引ノズルが乳輪まで吸い込んだ。
バイブレータの振動が倍増した。
「アヒーッ。生体脳ノ意識活動ヲ維持デキマセン。アアーッ。頭脳ガ緊急停止シマス。ピーッ。」
AK001は、目を閉じて、何も言わなくなった。
「だらしないロボットだ。」
そう言うと、研究員はリモコンを取り、スイッチを押した。
「ピッ。AK001、起動シマス。生体脳、活動停止中。微弱電流ニヨリ強制起動シマス。」
途端に、AK001は、目を大きく見開いた。
「生体脳、活動開始シマシタ。命令ヲ待機シマス。」
「よし、続けるぞ。」
「了解シマシタ。」
修司は手近な装置を手に持って、研究員の後ろに気づかれないようにそっと近づき、頭を殴って気絶させた。
それから、AK001の顔を確認した。その顔は、紛れもなく姉の響子だった。
「姉ちゃん!」
修司は、首だけの響子に近寄った。
「・・・アナタハ・・・シュウジ。」
「やっぱり姉ちゃんだね。いま、助けるから。」
修司はバイブレータを抜き取り、吸引チューブを乳首から外し、天井から伸びるロボットアームを引っこ抜いた。
響子の頭に近寄って見ると、頭蓋が取り除かれ、電子素子が付加された脳髄をむき出しにしていた。
「なんて、ひどい。」
「・・・アブナイ。」
「えっ?」
その瞬間、修司は首の後ろに衝撃を感じ、そのまま、気を失った。
修司が気が付くと、手足を椅子に縛り付けられていた。
「藍沢君、気が付いたかね。」
「緋川。くそっ。姉ちゃんをどうする気だ。」
「響子くんは、我が社の新製品として生まれ変わるところだ。わしの夢は人間そっくりのロボットをつくることだった。
これまで、何度も挫折してきたが、それがいま実現できるのだ。」
響子の頭は、直立するAK001のボディの首の少し上に固定され、研究者たちがケーブルを接続しているところだった。
「なにが人間そっくりのロボットだ。人間をロボットにしているんじゃないか。
こんな酷いことするなんて、お前ら、人間じゃない!」
「逆転の発想だよ。人間のようなロボットが作れないなら、人間をロボットにしてしまえばいい。」
ケーブルを接続し終えた響子の頭部は首に固定された。一人の研究員がうやうやしく緋川にリモコンを渡した。
「会長。完成しました。起動してください。」
「うむ。」
緋川がリモコンのスイッチを押すと、AK001はゆっくりと目を開けた。
「ピッ。AK001起動シマシタ。」
「姉ちゃん!」
修司の呼びかけにも、AK001は全く無反応だった。
「AK001右腕を上げろ。左腕を上げろ。」
「AK001前進しろ。右に曲がれ。Uターンしろ。」
AK001は、緋川の命令には反応し、そのとおりに動いた。
「ふむ。いいできだ。修司君。感謝しているよ。」
「くそっ。姉ちゃんを返せ!」
「君は、誤解しているようだが、我々は無理矢理、響子くんをロボットにしたわけではないよ。自分から志願したんだ。」
「そんな馬鹿な。」
「君は、あの1億を響子くんがどうやって手に入れたと思っているんだ。」
「ま、まさか、姉ちゃんは俺を助けるために?」
「そういうことだ。」
緋川の告げた真実に修司は愕然として、うなだれた。
「ううっ。おれは、なんてことをしたんだ。ごめんよ、姉ちゃん。」
「さて、当面の問題は、秘密を知った君をどうするかだ。我々で勝手に決めてもいいんだが、君の働きに免じて、選択肢を与えよう。」
「俺をどうする気だ?」
「第1は、ここで死んでいただく。第2は、君をロボットにする。男をロボットにするのは趣味ではないが、君の技能は殺すには惜しいからね。
第3は、自発的に我々の仲間になってもらう。さあ、どれにするかね?」
「誰が、お前等の仲間になるか。ロボットになるのも、御免だ。殺せ!」
「ふむ。第1の選択か。どうも、君は本当の自分の気持ちに気付いていないようだ。」
「何を言っている?」
「私は知っているのだよ。君が首なしの響子君のボディを見たとき、理想の女性を見つけたように惹かれていたことを。」
「あ、あのときは姉ちゃんだと知らなかったからだ。」
「なるほど。では、姉と知った、いまはどうかな。AK001、こいつとセックスしろ。」
「了解シマシタ。」
「やめろ!」
AK001は修司に近づき、ズボンのベルトを緩めた。下着ごと膝まで下げると、修司のものを口に咥えた。
「ううっ。やめてくれ!」
口の中で太さと固さが充分になるとAK001は口から外し、膝の上に跨ると、指で自分の秘所にあてがった。
そこはもう充分に潤っていて、AK001は、ゆっくりと中へ誘導した。
「やめてくれ!姉ちゃん。こんなこと、だめだよ。」
AK001は、根元まで包み込むと修司の肩に両手を置き、上下に身体を揺らし始めた。
「くくくっ。」
修司は、歯を食いしばって耐えた。だが、AK001のピッチは徐々に早くなっていくと、耐えきれなくなった。
「うおおぉっ。だめだ。くそっ。」
修司の意思に反して、ついに、AK001の中へ欲望の塊を吐き出した。AK001の秘唇からドロリと粘液がこぼれた。
「若いな。もう、イッたのか。」
ロボットになったとはいえ、実の姉と関係を持ってしまったことに修司はショックを受けて、緋川の嘲笑にも放心状態のままだった。
「どうかね?もし、我々の仲間になれば、毎日、君にAK001を使わせてあげよう。」
「うう。こんなの、狂ってる。お前等の仲間になるもんか。早く、殺せ!」
「私は、君の腕が是が非でもほしい。」
「だったら、ロボットにでもなんでもすればいいだろう。」
「ふむ、君も強情だね。」
緋川はしばらく考え込んだ。
「よし、これが最後の譲歩だ。仲間になって協力してくれるなら、AK001を君に譲ろう。」
緋川の突然の言葉に、研究員たちからブーイングが起きた。
「会長。それじゃ、約束が違います。」
「お前たちは黙っていなさい。」
緋川は、一喝で研究員たちを黙らせ、修司の方に向き直った。
「どうかね。これでだめなら、我々も決断せざるを得ない。」
「姉ちゃんが俺のものに?」
修司はその言葉に自分の気持ちが揺れ動くのを感じた。


第4話 終



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