『マシンチューニング』

作karma様




第6話 マシンへの愛情


「AK001、由里さんを作業室に運べ。」
「了解シマシタ。」
響子は由里に近づくと、抱き上げた。
「放して、響子!誰か助けてー。」
「大声を出しても無駄だよ。この部屋から作業室までは完全防音になっている。」
力なく暴れる由里を響子が抱きかかえて、修司が空けた作業室のドアをくぐると、そこには首に無数のケーブルとチューブが繋がった女性の頭部があった。
「きゃーーっ。加奈子!」
加奈子の頭部は頭蓋が外され、むき出しになった脳にロボットアームが電子部品を組み込んでいた。
「胴体は昨日完成したんだ。さっき、工場で見たよね。頭部は脳改造があるから、時間がかかる。
でも、もうすぐ、終わりそうだ。加奈子さんが終わったら、つぎは由里さんの番だよ。」
「いやーっ。あたしを帰して。お願い!」
「由里さん、悪く思わないでね。緋川会長から姉ちゃんを譲り受ける条件として、新しいロボットを2体提供しなきゃいけないんだ。自分で素体調達してね。」
修司がそう言っている間、AK001は由里の服をはぎ取り、手術台に固定した。
「緋川会長は、人体組織の材質変換とか機械の埋め込みとか、全て人手でやっていたから、完成まで一ヶ月くらい掛かっていたらしい。
俺が、この自動改造装置を作って見せたら、緋川会長が驚いていたよ。」
修司が起動ボタンを押すと、幾つものアームが近づいて由里の身体のあちこちに薬液を打ち込んだ。
激しくもがいていた由里の身体が次第に動きが鈍くなってきた。
「か、身体か動かない。」
由里は全身の感覚が薄くなり、自分の身体ではないようだった。
「皮膚や筋肉組織を高分子材料に材質変換する薬品だ。緋川会長の長年の研究による特製の薬品だ。」
次第に意識が朦朧として、身体の感覚が無くなってきた。ロボットアームが近づいてきて身体を切り刻み始めたが、もう由里は何も感じなかった。

何時間経過したのか、ぼんやりと由里が目を覚ますと、視界が揺らめいていた。
何かの液体越しに見ているようだった。自分は何かの液体の中にいるらしいが、不思議と苦しさは無かった。
身体を動かそうとして、首から下の感覚がないことに気付いた。
ふと、目の前を見ると、腹腔を大きく開けた首も四肢もない女性の胴が、液体を満たしたカプセルの中に浸されていた。
首と四肢の切断面には何本もチューブが接続されていた。その横には腕や脚が同じようにカプセルの中にあった。
「あれは、あたしの身体だ。バラバラにされちゃったんだ。」
由里は、朦朧とする頭でそう思うとそのまま、また、意識を失った。
再び由里が目覚めた時、視界の揺らぎは無くなっていたが、別の違和感を感じた。何かカメラ越しにものを見ているようだった。
意識を失う前に見たカプセルの中の胴体や腕脚はもう無くなっていた。
相変わらず、首から下の感覚はなかった。首を回そうとしたが、動かないので、
目だけ動かすと、視界の端に、女性型ロボットがみえた。
腹腔からむき出しになった機械に無数のケーブルが繋がったそのロボットは斉藤加奈子の顔をしていた。
そして、その横に全裸の女が、もくもくとパネルを操作しているのが、見えた。
藍沢響子だった。いや、今はAK001だった。
そこへドアを開けて、修司が作業室に入ってきた。修司は何かの装置を持っており、装置からはケーブルが延びていた。
修司が装置を操作するとドアの向こうから、首なし女性の身体がギクシャクと歩いて入ってきた。
首の切断面から、ケーブルが延び、その先は修司の持っている装置につながっていた。
「HY001の頭部の改造状況は?」
修司が問うと、AK001が答えた。
「現在、脳改造中デス。脳改造以外ハ全テ終了シテイマス。」
「SK001のテストは終わった?」
「ハイ。全テノ機能ハ正常デス。」
「わかった。」
そう言うと、修司はSK001の腹部のケーブルを外し、ハッチを塞いだ。
「HY001のボディが完成したから、エミュレータに接続してくれ。」
「了解シマシタ。」
AK001は、HY001の首にエミュレータのケーブル接続を開始した。
修司は首だけの由里をのぞき込んだ。
由里自身からは見えなかったが、頭蓋が開放されむき出しになった脳に無数の電極と注射針が刺さり、注射針にはチューブが接続されていた。
「由里さん、聞こえる?」
「あたしはどうなったの?身体が動かないわ。」
声は出せたが、喉の奥からスピーカーが喋っているという感じだった。
「そりゃ、そうだよ。由里さんの身体は切り離しちゃったから、いまは首だけ。」
「き、切り離した!?ど、何処?あたしの身体は何処!?」
「そこに見える首なしのHY001ロボットボディだよ。由里さんの身体から作ったんだ。」
AK001がHY001の首のケーブルを着け換えたところだった。
「これから動作テストするから、見せてあげる。」
修司がエミュレータを操作すると、HY001のボディが軽い機械音を発して、歩きだした。
「あたしの身体が・・・。」
「こんなこともできるよ。」
ふたたびエミュレータを操作すると、立ち止まって、右手で右の乳首をぐりぐりと摘み、左手で股間をまさぐりはじめた。
やがて、股間からビチャビチャという淫眉な音か聞こえた。
「やめて!あたしの身体を玩具にしないで!」
エミュレータのディスブレイに表示されたインジケータが大きく振れた。
「チューニング前でこれだけ振れるなんて、由里さんのボディは結構感じ易いね。」
「ううっ。あたしの身体を返してよ。もとに戻して!」
「心配しなくても、由里さんの頭は後でちゃんとボディに繋げてあげるよ。でも、玩具になるのは変わらないかな。」
「どういうこと?」
「説明するより、実際に見せた方がはやいね。SK001。お前の使命を言え。」
「私ノ使命ハ、私ノマスターノ命令ニ服従スルコトデス。」
「今、お前のマスターは誰だ?」
「修司様デス。」
「では、命令を与える。SK001、右手で右の乳首を摘み、左手であそこをまさぐれ。」
「了解シマシタ。」
SK001はHY001がしたとおりの行動を始めた。
「ねっ。ちっとも変わらないだろ。」
「やめて、加奈子。正気に戻って!」
「どうだ、SK001、感じるか?」
「ハイ、トテモ快感ヲ感ジマス。」
「では、HY001のボディにも同じようにしろ。」
SK001は、HY001のボディの背後に回り、乳房と秘唇を愛撫し始めた。
「由里さんの脳もマスターの命令に服従するように改造するからね。姉ちゃんと同じように。」
「いやぁ。やめて。」
「AK001、HY001の脳改造を開始する。」
AK001がコンソールのキーを叩くと、ディスプレイに脳の3Dモデルが現れた。
「脳内ニ人工ニューロン液ヲ注入シマス。」
細いチューブから注射針を通して由里の脳内に薬液が注入された。
「脳内ニ人工ニューロン回路ノ形成ヲ開始シマス。」
脳内に挿入された電極から電極へ微弱な電流が流れると、電流の通り道に沿って人工ニューロンが形成されていった。
同時に3Dモデルの内部に幾何学的な網状のパターンが徐々に広がっていった。
「ああっ。変よ。頭の中が変。あたし、どうなっちゃうの。」
「電子素子接続用ノ端子ヲ形成シマス。」
ケーブルの回りの脳表面に電子基板のような模様が浮き出てきた。ロボットアームが電子素子を運んで来ては、由里の脳に接続していった。
「変な考えが頭の中に浮かんでくる。私はロボット。私は、マスタの命令に服従します。いやぁ。こんなの!」
由里はぼろぼろと泣きながら叫んだ。やがて、泣きじゃくりも治まると、無表情になり、今度は譫言のようにしゃべり始めた。
「私はロボット。私はHY001。私は、マスタの命令に服従します。」
「順調だな。もうすぐだ。これで会長から姉ちゃんを返してもらえる。」
修司は、順調に進んでいることを確かめると、無表情にHY001のボディを愛撫しているSK001に指示した。
「SK001、AK001と交代しろ。」
「了解シマシタ。」
SK001と交代してAK001が席を立つと、修司は衣服を脱ぎ捨て、AK001の前に立った。
「AK001、いつものを頼む。」
「了解シマシタ。」
そう言うとAK001は修司の前にひざまづき、股間のものを口にくわえた。
「ああ、姉ちゃん。すごく気持ちいいよ。」
AK001の口の中で修司のものが充分な固さと大きさを備わってきた。
「うう。AK001、そろそろ準備してくれ。」
「了解シマシタ。」
すると、AK001の股間がしっとりと濡れ始めた。
「準備完了シマシタ。」
「立て!」
立ちあがったAK001を修司は抱きしめ、そのまま、ベッドに倒れ込んだ。
だが、修司は行為を始めず、AK001の上で身体を起こしたまま、じっとAK001のボディを見つめていた。
「ドウシマシタカ?。」
「AK001、響子モード起動。」
それまで無表情だったAK001が修司に微笑んだ。
「どうしたの?修司。」
「姉ちゃんのこのボディ、俺が全部チューニングしたんだ。静止バランスも、動的バランスも、関節モーターの速度も応答時間も。」
「このボディは快適よ。生身より調子がいいわ。」
「姉ちゃんのボディのこと全部わかるよ。どこがどのくらい感じるのか全部知ってるよ。」
修司は片手で乳房を握りしめ、もう一方の手の指を秘孔の中に沈めると、AK001は歓喜の声をあげた。
「ああっ。とても感じるわ。」
「俺、チューニングしてる間、姉ちゃんのボディだなんて全然思わなかった。姉ちゃんは、その間、あんなふうに首だけで居たんだね。」
「そうよ。何日も首だけで過ごしたわ。頭の中をいろいろいじられてセックスロボットに改造されたわ。」
AK001は一瞬、寂しそうな顔をした。
「でも、あたしはロボットになったことを後悔してないわ。修司を助けるためだもの。」
「姉ちゃん、ごめんよ。俺のためにロボットにされちゃって。」
「いいのよ。こうして、修司の所に戻れたから。」
「でも、そのためには姉ちゃんに友達を犠牲にさせちゃうけど。」
「あたしはロボットよ。もう、あたしには善悪は無いわ。修司の命令が私のすべてよ。」
「姉ちゃん、もう二度と離さないよ。」
「修司が望む限り、あたしは修司だけのロボットよ。」
一人の男と一体の女性ロボットはベッドでもつれ合い、作業室に喘ぎ声が響いた。


最終話 完



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