『Metal Doll Princess』
作 Rui 様
第4章「ヴァルキリーナンバー」
ACT1「VN―01唯」
軍部Metal Doll研究室第8ラボ
中央のベッドに寝ている唯とそれを囲む複数の研究者
「はぁ〜、相変わらずこの定期メンテが嫌になる。」
「文句を言わないの。年2回のメンテをしないと動けなくなるのは何処の誰かしら?」
唯の呟きに一人の女性研究者が口を開く
「うぅ、シルヴィアの意地悪。」
「はい。それじゃメンテするからオトスわよ。」
「うぅ。」
そう嘆くと意識が落ちる唯
―――夢を見た
機械人形である筈の、私が。
遥か遠く昔
何処かの王国に居る夢
白き衣を纏い、空を翔る私
不思議な夢
「ゆ〜い。終わったわよ〜。」
シルヴィアの言葉で我に返る唯
「…シルヴィア。終わったの?」
「えぇ。だからこうして起こしてるんじゃない。」
「…そう、ありがとう。」
研究棟廊下
歩きながら会話をする唯とシルヴィア
「はぁ?夢を見た?」
「えぇ。今現在機械人形で有る私が夢を見るなんて、不思議よね。」
「…確かにね。ちょっと興味が出てきたわ。それよりも、どんな夢か覚えている?」
シルヴィアの言葉に思い出す唯
「遠い、遠い昔の王国。そこで白き衣を纏って、空を翔けていたわ。」
唯の言葉に考えるシルヴィア
「シルヴィア?」
「少し調べてみるわ。何か解ったら連絡するわ。」
そう言うとその場から走り去っていくシルヴィア
研究棟第3ファクトリー
「どう?」
下の部屋で改造をしている技術者を見ている主任に対して口を開く唯
「水月さん。えぇ、順調ですよ。ですがちょっと素体が足りてない状況ですよ。」
「そう。…ねぇ、市街地の片隅に有る集落から探してこれないかしら?」
唯の提案に驚く主任
「あそこは…、治外法権みたいな所ですから何が起きても軍部や保安部は手を出せませんよ。」
「大丈夫よ。今回は見に行くだけだから。それに何か起きればあそこを一掃出来る名目が出来るし。」
「…はぁ、気を付けて下さいね。」
「了解。」
そう言うと部屋から出て行く唯
個人オフィス
「ハイネ〜、居る〜?」
オフィスに入ると同時に口を開く唯
「マスター、居りますが、何でしょうか?」
「車を出して。浮浪者の集落へ行くわ。」
「はい。解りました。」
そう言うとオフィスを出て行くハイネ
市街地浮浪者集落
「ハイネはここで待っててね。」
そう言うと集落へと入って行く唯
浮浪者集落内
その中を歩く唯
「(…素体になりそうなのは…見当たらないわね。来ただけ損かしら。)」
そう思いながら集落を歩く唯
「クリス様?」
ふと少女の声が聞こえ、声の聞こえた方を見る唯
そこには10歳くらいの少女が居た
「やっぱりクリス様だ。お忘れですか?侍従をしていたセイナです。」
少女セイナの言葉に不思議に思う唯
「セイナ?私は知らないわ。そもそも私は唯。水月唯よ。クリスなんて言う名前じゃ無いわ。人違いでしょ。」
「いいえ。確かにクリス様です。」
そう言うと唯に近づくセイナ
「違うって言っているでしょう!」
そう言うと集落内から走りさる唯
「クリス様。」
唯の去った方を見てそう呟くセイナ
集落入り口近辺
車迄戻ってくる唯
「唯様、お早いお帰りで。」
「ハイネ、車を出して!軍部へ帰るわよ!」
「…はい。」
帰る途中の車内
「(…彼女は私の事をクリスと言った。その名前に聞き覚えは無い。けれど、私は彼女を知っている。
何故?私は何処かで彼女と会っているって事?…解らない。)」
Another Character Story
IN
―セイナ―
あれは、あの姿は、確かにクリス様だった
けどクリス様は私の事を知らないと言った
知らないなんて事は無い。ただ、忘れているだけなのだろう
後で聞いた話によると今は軍部に居るらしい
…何かされたのだろう
そう、信じたい
Another Character Story
〜OUT〜
軍部司令部
「水月唯、入ります。」
そう言うと司令部に入る唯
「ご苦労だったな、水月君。それでどうだったかな?浮浪者の集落は?」
「はい。特にこれと言った事は有りません。」
「そうか。下がって良いぞ。」
その言葉に部屋を出て行く唯
休憩所
椅子に座り一息付く唯
「お疲れ様。」
「シルヴィア。」
ふと声を掛けられ、姿を見てその名前を言う唯
「どうだった?」
「うん、これと言って特には。ただ、私の事をクリスと呼ぶ少女が居たわ。」
唯の言葉にふと考え込むシルヴィア
「シルヴィア?どうしたの?」
「いえ、もしかしたら貴女が見た夢と関係有るかも知れないわね。」
シルヴィアの言葉に軽く驚く唯
「どうする?確認してみる?」
「…うん、お願い。」
シルヴィア私用ラボ
「それじゃ〜始めるわよ。」
そう言うと目を閉じる唯
それを確認してパネルを操作し始めるシルヴィア
Another Character Story
IN
―クリス―
中世の雰囲気をかもし出す城
その城内に一人の男性が居り、
その側には二人の女性の姿が有った
―あれは、私?もう一人は、誰?
男性の側に居る女性の一人は、金髪で長髪ながらも、唯に似ており、
もう一人は漆黒で、長髪
「クリス・―――、すまない。」
男性がそう言ったのだけ聞き取れたが、漆黒の髪の女性の名は、聞こえなかった
Another Character Story
〜OUT〜
ラボ
「唯、おはよう。何か解った?」
「…いえ、何も。」
少し間をおき、そう答えた唯
同時刻
発掘現場
「おやっさ〜ん!」
一人の青年が現場監督を呼ぶ
現場監督が呼ばれた場所に行くと既に複数の作業員がその場に居た
疑問に思いながらも作業員の一人に案内され、現場を見るとそこには…
「…女性。」
土に埋もれた女性が居たのだ
「黒髪でロングの。」
そう呟く現場監督
その直後目を開く土に埋もれた女性
土から出ると周囲を見渡す女性
「な、なんだお前は?」
ふと一人の作業員が口を開く
その作業員の方を向く女性
「…私の名はフィーリア。マスターに仕える者。」
続く
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