『Metal Doll Princess』
作 Rui 様
三章「鷲月沙羅/レイヴン」
ACT1「Another Doll」
とある繁華街
「待てぇ〜!泥棒!」
八百屋の店主に追いかけられる一人の女性
「早く早く〜。じゃないとまた逃げちゃうよ〜。」
そう言って店主を軽くあしらうと路地裏に消えていった
「ちくしょう。また逃げられた。商売上がったりだ。」
落ち込みながら自分の店に戻る店主
そんな店先には一人の女性が立っていた
「お疲れ様です。毎度の事なんですか?」
「あぁ。全く、奴には困ったもんだ。」
「そぅ。所で、お一つ頂けるかしら?」
何だかんだ言って野菜を一つ買っている女性
路地裏のアパート
「シア〜、戻ったよ〜。」
先程の女性が声をあげる
「サラお姉ちゃん、お帰り。今日は何?」
「今日はお野菜と、飲み物も有るわよ。」
「わぁ〜、ありがとう。サラお姉ちゃん。」
「良いの。可愛い妹の為だから。」
その日の夜の早坂邸ロビー
そこには神・ルイ・ルーナ・唯に礼の姿が有った
「また一体増えたのか。」
ルーナを見て呆れる礼
「私の趣味だ。多ければ多い方が良い。まっ、多過ぎるのも困るけどな。」
「そうか。」
そう言うと少し考える礼
「何考えてるんだか…。」
そう言いながらノートパソコンのモニターに表示されている報告書を見ている唯
「なぁ神。」
いきなり口を開く礼
「ん?どうした?」
「俺も機械人形が欲しい。」
「「はっ?」」
思わずハモる神と唯
「え、えっと具体的にはどんな感じのが良いの?」
「…とりあえず家事全般は出来ていて欲しいな。」
「後は?」
呆れ気味に唯が次いで口を開く
「性交が出来れば尚良し。それと従順に従うのは外せないな。」
「…解った。用意出来たら連絡する。」
「そうか。それじゃ、楽しみに待つとするか。それじゃ、また。」
「「お気をつけてお帰りなさいませ。」」
同時に同じ言葉を同じタイミングで言うルイとルーナ
「それよりも、調達出来るのか?」
「えぇ。深夜にでも紹介するわ。素体を。」
そう言うと外へ出て行く唯
「「お気をつけてお帰りなさいませ。」」
またも同じタイミングで同じ言葉を言うルイとルーナ
路地裏
外に出て月を眺めるサラ
「…頑張らなくちゃ。そうじゃないと、シアに良い生活をさせる事が出来ない。」
そう言うと顔を俯かせるサラ
「鷲月、沙羅さんね。」
ふと聞こえた女性の声に構えるサラ
「貴女、何者?まさか、保安部?」
「いいえ、違うわ。私は水月唯。軍の者よ。」
一瞬驚くが直ぐに冷静になる
「それで、軍の人間が何の用ですか?」
「妹さんに、楽な生活をさせたいんでしょ?」
唯の言葉に再度驚くサラ
「図星ね。けど、それが出来ない。現実とは悲しい物ね。」
「何が言いたい!!!」
唯の言葉に怒鳴るサラ
「取引をしない?私の言う事に従うのなら、貴女が妹さんにさせたい事を、支援するわ。」
唯の言葉に黙り込むサラ
「その気になったら軍の基地を訪れなさい。私の名前を出せば通れるようにしておくから。それと、自身が何を願ってるのか、考えなさい。それじゃ。」
そう言うとそこから去っていく唯
「…私が、願う事。」
自前の車内
電話を掛ける唯
「もしもし?神?唯よ。………そぅ。その事なんだけど、もうしばらく待ってくれる?………まぁそう言う事。それじゃ。」
そう言って電話を切ると車を走らせる唯
3日後
極東軍基地
唯の個人オフィス
いつも通りパソコンに向かいキーボードを打っていると、側に居た女性が口を開く
「マスター、正面ゲートにお客様が来ている模様です。」
「お客様?私に?」
「はい。」
「…誰だろう?ハイネ、迎えに行ってくれる?書類溜まっててさ〜。」
「はい。マスター。それでは迎えに行って参ります。」
そう言うと部屋を出て行くハイネと呼ばれた女性
正面ゲート
「すみません、唯様へのお客様はどちらに?」
ゲートに着くと守衛室に入り尋ねるハイネ
「おう、このお嬢ちゃんだ。」
「貴女が唯様へのお客様ですね。」
「えっ?あっ、はい。鷲月沙羅と言えば解るかと思います。」
「少しお待ち下さい。」
そう言うと守衛室の電話を借りて唯に確認を取るハイネ
受話器を下ろすと口を開くハイネ
「お待たせ致しました。確認が取れましたので唯様の所迄お連れ致します。」
そう言うと守衛室を出て行くハイネ
それについて行くサラ
唯個人オフィス
「唯様、お客様をお連れしました。」
「ありがとう、ハイネ。それと、何か出しといて。何飲む?」
「えっ?あっ、それじゃ、お茶で。」
「ハイネよろしく。」
「はい。」
そう言うと小さなキッチンへ入って行くハイネ
「よっと、これでOK。」
そう言うと立ち上がりサラの前に座る
「決心はついたのかしら?」
「本当に、私が望む事をシアにしてくれるんでしょうね?」
「えぇ。嘘はつかないわ。」
「それなら、シアに、人並みの生活をさせてあげたいんです。
あんなストリートじゃなくて。孤児院でも良いからちゃんとした所に…。」
「解ったわ。ちょっと待ってて。」
そう言うと立ち上がり再びパソコンの前に座る唯
それと同時にお茶を出すハイネ
「どうぞ。」
「あっ、ありがとうございます。」
そう言ってお茶を飲むサラ
「出来た。ハイネ、私のR運転出来るわよね?」
「はい、出来ますが。」
「なら彼女を連れて妹さんを例の孤児院へ。これ、紹介状ね。」
「はい。承りました。それではサラ様、行きましょうか。」
「あっ、はい。」
そう言うと唯の個人オフィスを出て行くハイネとサラ
そのままシアを迎えに行き孤児院で事情を話しサラを乗せたまま
基地内の唯の個人オフィスに戻って来た二人
唯の個人オフィス
「唯様、只今戻りました。」
「あっ、お帰り。それじゃ、行きましょうか?サラ。」
唯の言葉に戸惑うサラ
「えっ?行くって、何処からですか?」
「貴女を必要としてくれている人の所。ハイネ、神と礼に連絡しといて。
場所は神の所。そしたら今日は上がっていいから。」
「はい、解りました。それではお気をつけてお帰りなさいませ。」
そう言うとお辞儀をするハイネ
「そんじゃ。」
そう言うと個人オフィスを出て行く唯とサラ
唯の車に乗り着いた先は早坂邸で有った
車から降りる2人
早坂邸を見るサラ
「どうしたの?この中に貴女を必要としてくれる人が居るのよ。」
「…何か、緊張してきました。」
「まぁ、無理も無いわね。行くわよ。」
「は、はい。」
早坂邸へと入って行く2人
ACT2へ続く
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