『メカニカルレディ』

作karma様




第3話 プロトタイプ製作


AKIKOが目を覚ますと、ソファベッドの上に寝ていた。背中にベッドの感触を直に感じた。
「私、裸なんだわ。」
起き上がろうとしたが、身体が動かなかった。首を動かすことも、瞼を閉じることできなかった。
横に目黒とSIZUKAが立っているのが見えた。目黒に問いかけようとしたが、声がでなかった。
「どうして、身体が動かないの?声が出ないの?」
突然、自分がロボットであることを認識した。
「私がロボット?だから命令がないと動けないのね。でもなぜ私がロボットなのかしら?私は夢を見ているの?」
AKIKOはこの不合理な状況を夢だと思うことにした。
突然、言葉が口に出た。目覚めた時に言わなくてはいけない言葉だった。
「AKIKO覚醒しました。ロボットモードで起動します。」
AKIKOはそのとき、自分が風間亜希子でないことを理解した。
目黒の声がした。
「AKIKO、制御レベルを報告しろ。」
目黒が自分の名前を呼び捨てにしたり、命令口調で話しかけることにAKIKOは違和感を覚えたが、
自分はロボットだから仕方ないと思った。
「現在、脳の機械化はロボットモード可能レベルですが、生体脳に意識が残っています。
強度の刺激で制御解除になります。」
AKIKOは、自分が何を喋っているのか理解できなかった。しかし、目黒には判ったようだった。
「そうか。とすると試運用は後にしたほうがいいな。まず内部を確認しよう。AKIKO、腹部ハッチを開けろ。」
目黒の指示に、AKIKOはどうしていいのかわからなかったが、頭の中にいる別の自分が指示を理解した。
自分の腹の蓋が開くのが判った。また目黒の声が聞こえた。
「うわぁ、グロテスクだ。もう少し進行しないと、こいつは見せられんな。」
AKIKOは自分の内部がどうなっているか聞きたかったが、ロボットは命令がなくては喋ってはいけなかった。
「SIZUKA、とりあえず、AKIKOの改造状況をモニタして、叔父さんとこにデータを転送してくれ。」
「了解しました。」
SIZUKAが腹部ハッチを開けて、ハッチの内部とケーブルで接続すると、SIZUKAからの指令を受信した。
「AKIKO、ボディの状況を報告しなさい。」
ロボットに命令されることに抵抗を感じたが、AKIKOはボディの状況をモニタし、
データをSIZUKAに返信した。同時に同じ内容を喋っていた。
「ボディの状況を報告します。脳細胞の電子素子化20%、骨格のセラミック化20%、内臓の機械化10%、
皮膚のアミノ樹脂化30%、筋肉のイオン伸縮樹脂化15%です。」
自分で話している言葉なのに、内容はわからなかった。別の自分が自分を制御しているようだった。
「肩関節と大腿部のジョイントは完成しています。」
「それって、腕と脚は外せるってこと?」
「はい、そうです。」
「それだけでも見せれば連中は納得するだろう。よしAKIKO、両腕両脚を外せ。」
突然、肩と腿の付け根がカチッと音がして、腕と脚の感覚が無くなった。
目黒がAKIKOの腕や脚を引っ張るとスルッと抜けた。
「腕とか脚が外れるなんて日常では体験できないわね。すごい夢だわ。」

「さてと、連中のことだ。胸とか触らせろと言うだろうな。制御解除になるかもしれないが、そっちも試しておくか。
限界も知っておきたいし。」
そう言うと目黒は、AKIKOの頭側に迴り、ベッドの縁に立ち、SIZUKAに声を掛けた。
SIZUKAとAKIKOはまだケーブルで繋がっていた。
「SIZUKA、おまえの方からAKIKOを強制停止できるか。」
「可能です。」
「よし。」
AKIKOは、顔の上を二本の腕が伸びていくのが見えた。突然二つの乳房に、ぎゅっと握りしめられる感触があった。
乳房をいきなり握りしめられて、AKIKOはうめき声を出そうとしたが、声がでなかった。
目を閉じることさえできなかった。しかし、ボディが微かにビクッと震えた。
「AKIKO、制御に問題ないか。」
「制御は継続しています。現段階では、生体脳の反射的行動を完全に抑制できません。」
しばらく、乳房を掴まれ、揉まれ、こねられていた。次第に乳首が固くしこっていった。
両乳首に指先が触れるのを感じた途端、思いきり絞りあげられた。AKIKOは悲鳴をあげたかったが、
どうしても声を出せなかった。
「私はロボット。命令がなければ声を出したくても出せない。動きたくても動けない。」
しかし、AKIKOは疑問に思った。
「でも、ロボットならどうしてオッパイを揉まれて感じるの?これは、やっぱり夢?」
ボディの震えがさっきより強くなった。
「制御が不完全だな。でも、この程度なら何とかごまかせるだろう。」
目黒が反対側の縁に廻り、ベッドに這い上がって来た。
「ちょっと、姿勢がきついな。腰の下に何かあてがおう。」
AKIKOは、尻が持ち上げられ、腰の下に何か柔らかい棒状の物があてがわれたのを感じた。
股間を目黒に突きだすような形になった。AKIKOからは見えなかったが、目黒は、
AKIKOの外した脚を一本横にして腰にあてがっていた。
「今度は良く見える。」
目黒の指が敏感な個所にさまざまに刺激を加え、AKIKOは激しい快感に揺さぶられた。
「ああ、感じるわ。私はロボットなのにどうしてこんなに感じるの。」
AKIKOは思いきり声をあげたかったが、口を開くことさえできなかった。ただ、ボディの震えが激しくなった。
「AKIKO、そろそろ危ないか?」
「はい、制御限界に近づいています。」
快感の波が高まり、絶頂を迎えると、AKIKOの頭の中で何かがはじけた。
「何?この感触は。これは夢じゃないの?」
自分を押さえつけていたものから開放された喜びに、ダルマボディは大きくえびぞりになり、
それと同時に、大きくあえぎ声を発した。
「制御解除になった。SIZUKA、強制停止しろ。」
「AKIKOを強制停止します。」
SIZUKAがそういった途端、AKIKOの意識は途切れた。
―――――――――――――
窓からさし込む朝の光に風間亜希子は目覚めた。服装は昨日のままで、ソファベッドに寝ていた。
身体に掛かっていた毛布をはねのけ、自分の身体を確かめた。
「腕も脚もちゃんと付いてる。服も乱れていない。あれはやっぱり夢?」
そこへ目黒が戻ってきた。後には大量のコピーを抱えたSIZUKAが付いてきていた。
目黒の顔を見ると夢のシーンが思い出されて、赤くなりそうだったが、風間は平静を装った。
「おはよう、目黒君。」
「あっ、課長。お目覚めですか。課長の作った資料は人数分コピーしておきました。」
「ありがとう。えーと、ここに寝た記憶がないんだけど、私どうしたの?」
「ええっ?覚えてないんですか。課長、ものすごい勢いで資料を作り出して、
『終わった。』とおっしゃったと思ったら、そのまま眠ってしまったんですよ。
それでソファベッドに運んだんですけど、SIZUKAが居て助かりましたよ。僕一人じゃ持ち上げられなくて。」
「失礼ね。そんなに重くないわよ。」
「あっ、いや。僕が非力なだけです。よく眠れましたか。」
「ええ、ぐっすり。でも、へんな夢をみたわ。」
「どんな夢です?」
「自分がロボットになった夢よ。バラバラにされてね。」
さすがに、目黒に乳房や陰部をいじられたことは言えなかった。
「ははっ。それは、今日の会議が気になっているからですよ。」
「そうかもね。目黒君、あたし、ちょっと席をはずすわ。」
「えっ、課長、どこに行かれるんですか。」
「女はね、男と違って、身だしなみに気を使うのよ。あっ、そうだ、デモルームの準備をしておいて。」
「わかりました。」

トイレの洗面台で化粧を直していると、森下が入ってきた。
「あっ、課長もここだったんですか。あたし、慌てて出てきたから、ろくにお化粧もしなくて。」
「私も、会社で泊まってしまったのよ。資料が完成したら、気が緩んで眠ってしまったわ。」
「済みません。お手伝いできなくて。」
「いいのよ。」
「眠っている間に、目黒に何かされませんでした?」
「何もあるわけ無いでしょう。」
まさか森下に夢の話をするわけにもいかず、風間は即座に否定した。
「いま、目黒君が一人でデモルームの設営をしているわ。手伝いに行きましょう。」
「はい、判りました。」
風間と森下がデモルームに行くと、目黒がテーブルに資料を配布していた。森下が目黒に声を掛けた。
「おはよう、目黒。」
「おはよう。」
「サンプルロボットはどうなった?」
「なんとかなったとよ。」
そのとき、SIZIKAの声が聞こえた。
「目黒様、資料の配布が完了しました。」
デモルームを見渡すと、離れたテーブルでSIZIKAも資料を配布していた。
「そうか、SIZUKAが届いたんだ。」
「うん、こうして手伝ってもらって助かっているよ。やっぱりSIZUKAは普通のロボットじゃないね。」
「そうだね、今日の連中がその辺を判ってくれるといいんだけど。」
「僕なりに手はいろいろ考えてはあるよ。」
「目黒の考えじゃアテにならないわね。」
目黒と森下が話しあっていると、加賀部長がデモルームに入ってきた。
「風間君、準備はできたか。もうすぐ重役連中が来るぞ。」
「はい、プロジェクタの準備も資料の配布も終わっています。サンプルロボットは間に合わなくて、
メタルボディタイプですが用意しました。」
「これが、君達が騒いでいたSIZUKAというロボットか。普通のロボットじゃないか。」
加賀の言葉に森下が反発した。
「中身は普通じゃないですよ。」
「君の主張が重役連中に通ればいいがな。」
そういっていると、重役の面々がデモルームに入ってきた。
加賀部長をはじめ風間たちは、それぞれ、配置に着き、応札の説明を始めた。
まず加賀部長が引合の内容を説明し、
風間が、ロボット娼館のコンセプトと黒崎研究所の協力体制と作業分担について説明した。
説明が終わると常務が質問した。
「風間君、黒崎研究所と組んで本当に大丈夫かね。
五星物産と組んだオフィステクノ工業はすでにサンプルロボットをクライアントに見せたそうじゃないか。」
「たしかにまだスーパーリアルモデルのサンプルはありませんが、近いものとして今日SIZUKAを用意しています。」
「SIZUKAというのは、そこのブリキロボットのことかね。」
森下が反発した。
「外見はブリキロボットかもしれませんが、中身は普通ではありません。人間の会話をちゃんと理解します。
この資料の配布もSIZUKAが手伝ったんですよ。」
「オフィステクノ工業の事務用ロボットは人間と同じように事務処理をこなすそうだ。
その程度では、外見の不利を補えるとは言えんな。」
森下が答えに詰まると、目黒が立ちあがった。
「皆さんのご心配は御もっともです。ですが安心してください。サンプルロボットはあります。」
目黒の突然の言葉に常務が切り返してきた。
「目黒君、そんなロボットがあるなら、我々に見せてくれたまえ。」
加賀部長が慌ててフォローに入った。
「常務、目黒が言いたかったのは、サンプルロボットは今、黒崎研究所で鋭意製作中ということで、
近日中に披露できるということです。なっ、そうだろ?」
「いいえ、サンプルロボットはこのデモルームに用意しています。」
目黒の言葉にデモルームがざわついた。
自分のフォローをあっさり目黒に否定され、加賀部長は顔を真っ赤にした。
「そんなことを言うなら、早く皆さんにお見せしなさい。」
森下も目黒に小声で忠告した。
「何を考えているのか知らないけど、へんなハッタリは反感を買うだけよ。」
風間課長も目黒を睨みつけた。
「目黒君、ありもしないロボットの話で会議をかき混ぜないでちょうだい。そんなロボットが何処にあるの。」
「ではお見せしましょう、サンプルロボットを。ロボットモード移行!」

風間は、目黒の言葉を聞いた途端、自分がAKIKOになったことを感じた。
目黒のたわごとなど無視して、説明を続けなければと思っていた意思は霧のように散っていった。
見るもの、聞くもの全てが単なる現象となり、AKIKOにとって意味が無かった。唯一、目黒の言葉だけが、意味があった。
「この感じは夢の時と同じだわ。あたしがロボット?あれは夢のはずよ?なぜ動けないの。なぜ喋れないの。」

皆の視線が一斉に、直立不動の無表情になった風間に集まった。常務が少し苛ついた声で言った。
「風間君、目黒君のジョークに付き合うのは止めなさい。」
しかし、風間は無表情に立ったままだった。
「私が冗談を言っていると皆さんは思われているようですが、そうではありません。
では手始めに、AKIKOを私の指示どおりに動かしてみましょう。」
AKIKOは目黒が命令するとおり、右へ左へと動いた。
「目黒君。風間課長が、君の茶番に協力するほど仲がいいことは判ったよ。
だが我々は、直面している問題に対して現実的な対応を聞きたいんだよ。」
常務がイライラしながら文句を言った。
「まだ、お疑いのようですから、風間課長が絶対しないことをやらせて見ましょう。
AKIKO、服を脱いで裸になりなさい。」
AKIKOは上着を脱ぎ、ブラウスのボタンを外しはじめた。
「風間さん、もう止めて。」
森下の叫びも空しく、AKIKOは下着を脱ぎ終え、素裸になった。

目黒の命令はAKIKOにとって絶対だった。自分を動かすものは自分の意思ではなく、目黒の命令だった。
大勢の目前で裸を晒すことは死ぬほど恥ずかしかったが、命令どおりに服を脱いでしまった。
「目黒君はあたしに何をしたの?どうして彼の言う通りに動いてしまうの?あたしは本当にロボットなの?
ロボットならどうしてこんなに恥ずかしいの?」

「風間君、どういうつもりだね。ストリップをして、サービスのつもりかね。
それとも我々をセクハラ重役といって訴えるつもりかね。」
常務の質問にも、AKIKOは黙って裸のまま直立不動の姿勢をとっていた。
「まだ、皆さんは風間課長が芝居をしていると思っておられるようですね。では、決定的な証拠をお見せしましょう。AKIKO、両腕両脚を外せ。」
「二人ともいいかげんにしてくれ。いつまで茶番を続けるつもりだ。」
目黒はヤジを無視して、AKIKOに近づくと、腕をひっぱった。AKIKOの腕が抜けると森下が悲鳴をあげた。
「きゃーっ。風間さん。そんな。」
重役達からは、おおっというどよめきが聞こえた。
目黒は、もう一つの腕も抜き取り、SIZUKAにAKIKOの胴を持ち上げるよう命じた。
SIZUKAはAKIKOの背後に廻り、胴を持ち上げるとAKIKOの2本の脚が残った。
「いかがでしょう。これで信じていただけますか。」
重役達はダルマになったAKIKOの姿を見て、うーんと唸っていた。
加賀部長も森下もただポカンと口をあけているだけだった。
副社長がおもむろに口を開いた。
「信じられん。では、さっき我々に資料説明していた風間課長はロボットだったのか。」
「そうです。これが今回の会議に用意したAKIKOです。これで黒崎研究所の技術力をお判りいただけたと思います。」
「ちょっと近くで見てみたい。こっちに持ってきてくれ。」
「判りました。SIZUKA、AKIKOを皆さんの所へ運んでくれ。」
SIZUKAがAKIKOのボディを支えたまま、重役達の方に近寄った。

SIZUKAに持ち上げられ、ダルマ状態で重役達の前に晒されると、好奇の視線が自分に纏わりついた。
「惨めだわ、こんな姿で晒し物にされるなんて。私はロボット?風間亜希子ではなく、今日の会議のサンプルロボット?」

副社長が立ちあがり、間近でボディを舐めるように眺めた。
「人間の皮膚と区別がつかん。目黒君、その・・・、触ってもいいか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
副社長の手がおそるおそるAKIKOの腹に触れた。
「うむ、感触は本当の人間の皮膚のようだ。」
その手が少しずつ上がって、乳房に触れた。副社長の顔が上を向き、AKIKOの顔を見た。変化がないのをみると、手に力をこめて握りしめた。微かにAKIKOのボディが震えた。慌てて、副社長が手を離した。
「おい、いま少し動いたぞ。」
「すみません。組みこんである娼婦プログラムにバグがあって、
敏感な箇所を刺激するとロボットモードでもわずかに反応してしまいます。この問題はまもなく解決します。」
目黒の説明を聞いて安心した副社長は再びAKIKOの胸をまさぐりだした。
「ほう、この感触。まるで本物の風間君の胸を揉んでいるようだ。」
副社長の言葉に、横にいた専務も身を乗り出してきた。
「副社長、私にも触らせて貰えませんか。」
「おお、君も触ってみるがいい。」
副社長は専務に席を譲った。
専務はAKIKOの二つの乳房を鷲掴みに握りしめた。
「これがAKIKOのオッパイか。柔らかくて張りがあっていい感じだ。おっ、もう乳首が立ってきた。
AKIKOは感度がいいな。」
「こっちはどうかな。」
足が外れたために丸見えになったAKIKOの股間を、常務が頭を低くして覗き込んだ。
「ほう、濡れている。よく出来てるじゃないか。」
常務は左手で亀裂を左右に広げ、右手の中指を膨らんだ突起にグリグリと押しつけた。
AKIKOのボディの震えが一層、激しくなった。
いきなり常務は指を中にズブリと挿し込んだ。AKIKOのボディがビクンと大きくそりかえった。

AKIKOは、敏感な個所を次から次へと重役たちにより責められ続けた。
「いや、やめて。触らないで。」
AKIKOは叫びたかったが、何の意思表示もできなかった。
「オッパイを揉まないで。乳首を引っ張らないで。中に指を入れないで。
ああ、そんなにいじられたら、どうにかなってしまうわ。」
AKIKOは自分が限界に近づきつつあること感じていた。

目黒が唐突にAKIKOのデモを打ち切った。
「皆さん、興味は尽きないと思いますが、そろそろ時間です。AKIKOはまだ開発途中なので、
これから黒崎研究所に返却しなければなりません。」
AKIKOに無中になっていた重役達は、はっと我に返った。
「うむ、そうだ。こんなところで時間を無駄にしてはいかん。すぐ開発を継続しなさい。」
目黒は、SIZUKAに耳打ちした。SIZUKAはAKIKOを組み上げると、AKIKOに後に付いてくるよう指示した。
2体はデモルームのドアへ向かった。途中で森下の前を通りすぎた。
「おまえのような、いやらしいロボットを風間さんだと思っていたなんて。」
森下は蔑むような目でAKIKOを見た。
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会議を終えて、目黒と森下が執務室に戻ると、SIZUKAが先に戻っていた。森下が肩をポンポンと叩いた。
「SIZUKA、AKIKOは?」
「返却しました。」
「今日はご苦労様。」
「どういたしまして。」
風間課長を探したが不在だった。
「課長、いないのかな。」
しばらくすると、風間課長が部屋に入ってきた。森下が声を掛けた。
「あっ、課長、おはようございます。今まで何処にいたんですか。」
「おはよう、未来ちゃん。私は、えーと・・・。」
風間は、答えようとしたが、つい先ほどの記憶を思い出せなかった。
すかさず、目黒が答えた。
「課長は、ご自宅にいたんですよ。」
「そうよ、未来ちゃん。いま、出社したのよ。」
突然、風間の記憶が鮮明になった。
「目黒、あんた、なんで知ってるの?」
「だって、僕が課長に頼んだんですから。会社に風間課長が二人いたら、演出が台無しになっちゃうでしょ。
それに、夜遅くまで資料を作って、お疲れのようでしたからね。」
「目黒君、森下君、ご苦労様。会議はどうだった?」
「課長、サンプルロボは、すごかったですよ。重役連中、みんな鼻の下を伸ばして、触りまくっていました。
満足したみたいで、応札にゴーが出ました。」
「そう、それはよかったわ。」
森下は目黒に文句を言った。
「あたし、すっかり本物の課長だと思っていたわ。目黒の演出なのね。今度からあたしにも事前に話して。」
「悪い、悪い。急にサンプルロボットが届いたから。」
そこへ加賀部長がやってきた。
「いやあ、君達。AKIKOは、すごい評判だったよ。副社長が早速クライアントに連絡したらしい。
明日、AKIKOをプレゼンするよう要求があった。目黒君、黒崎所長に頼んでおいてくれ。」
「部長、あれはまだ開発の途中です。度々中断するのは工程に支障が出ます。
それにクライアントに見せて、トラブルがあったら、問題になりますよ。SIZUKAじゃ駄目ですか。」
「AKIKOとブリキロボットじゃ比較にならん。何としてもAKIKOをクライアントに見せるんだ。
素っ裸にして、クライアントに触らせろ。出来れば本番もやらせろ。」
それを聞いていた風間が急に額を手で押さえた。
「どうしたんですか、課長。」
「急に頭痛が。」
「そりゃ、いかん。無理したからだろう。すぐ、白鳥クリニックへ行きなさい。」
風間が歩き出すとふらついた。
「危ない。SIZUKA、風間課長を運ぶんだ。」
「了解しました。」
「SIZUKA、こっちだ。」
SIZUKAが風間を持ち上げると、目黒はエレベータへ向かった。
「目黒、風間さんを頼むわ。後で私も顔をだすわ。」
「OK、任せてくれ。」

風間を抱えたSIZUKAが目黒に続いて入ってくるのを見て、白鳥は驚いた。
「あたし、こんなロボット見るの、初めて。」
「今日の会議で使ったロボットなんです。」
風間を椅子に座らせ、白鳥は聴診器を当てて診察を始めた。
「特に異常はないわ。心音、呼吸音とも正常よ。」
「そう?でも、頭が痛いのよ。」
「多分、疲れのせいだと思うわ。とりあえず、頭痛薬を出すから、それで様子を見て。いま、薬を持ってくるわ。」
「あっ、僕が取りに行きます。」
目黒が白鳥から薬を受け取ると、戻ってきて風間に飲ませた。
「目黒君、ありがとう。頭痛が収まったわ。ちょっと、眠くなったから、横になるわ。」
「ええ、休んでください。」
風間が寝てしまうと、クリニックの電話が鳴った。白鳥が電話に出た後、目黒のところへきた。
「目黒君、悪いけどちょっと出かけるわ。咲ちゃんもいないから、風間さんを看てて。すぐ戻るわ。」
「わかりました。」

森下はクライアントのトラブル処理の報告書を書き上げると、風間の様子を見に1階に降りていった。
「目黒のやつ、ちっとも帰ってこないな。風間さんをサボリの口実にする気かしら。」
白鳥クリニックのドアの前で白鳥有香と会った。
「あら、未来ちゃん。亜希ちゃんのお見舞いに来たの?」
「ええ。先生、お出かけだったんですか。」
「うん、ちょっとね。目黒君に留守番を頼んじゃった。」
「それで、あいつ帰ってこないのか。連絡ぐらいくれればいいのに。」
しかし、ドアを開けて見ると、中には誰もいなかった。


第3話 終



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