『メカニカルレディ』

作karma様




第4話 プロトタイプの問題点


いまAKIKOは、目黒の自宅で裸でベッドの上に横たわり、目黒の指示を待っていた。
白鳥クリニックで、ロボットモードで起動したあと、SIZUKAと共に目黒の自宅にきていた。
「AKIKO、改造状況を報告しろ。」
「改造状況を報告します。脳細胞の電子素子化50%、骨格のセラミック化90%、内臓の機械化90%、皮膚のアミノ樹脂化70%、筋肉のイオン伸縮樹脂化60%です。
全ボディ機械化完了の予定時刻は、明日24時です。」
「脳の電子化速度が遅いな。叔父さんの言うとおり、研究所の専用設備がないと駄目だな。
参っちゃうな。まだ未完成だっていうのに、加賀部長、勝手にクライアントと約束しちゃうんだから。お陰で今夜も徹夜でAKIKOのテストだよ。」
目黒は加賀部長の愚痴をこぼしながら、AKIKOにメンテハッチの開放を命じた。
機械化が進んだAKIKOの内部は、昨夜と違って臓器は影も形も無く、機械で詰っていた。
「内部はロボットらしくなったな。SIZUKA、改造ログを採取して叔父さんに転送してくれ。」
SIZUKAは、自分のメンテハッチを開け、AKIKOとケーブルで接続した。
「AKIKOの改造ログを採取します。・・・。採取ログを送信します。・・・。送信を完了しました。」
「これからAKIKOの機能をテストする。モニタしててくれ。」
「AKIKOのボディの制御は必要ですか?」
「いや。反応を見たいから、モニタに徹してくれ。」
「了解しました。」
目黒は、AKIKOの乳房を指先で責めつづけた。AKIKOは無表情のままだったが、媚肉は潤滑液の分泌を始めていた。
まさぐると目黒の指の動きに合わせて淫媚な音がした。
「ボディの反応は正常だな。SIZUKA、モニタ結果を報告してくれ。」
「生体脳の性的反応は電子脳で完全に制御されています。ボディに与えられる刺激に対し、適切に反応しています。」
「ロボットモードは大丈夫そうだな。じゃあ、AKIKO、セクサロイドモードへ移行。」
セクサロイドモードでは、性的刺激信号に対して、生体脳の反応で直接ボディを反応させるようになっていた。
黒崎の忠告によれば、生体脳が活動する部分が多いため、動作が不安定になることが多いとのことだった。
できれば電子脳が完全な状態になってからテストしたかったが、明日のデモのために今日テストしなければならなかった。
「念のため、腕と脚を外しておくか。」
目黒は、AKIKOに肩間接と大腿部のジョイント解除を命じ、四肢を外して床下に置いた。
手足を奪われダルマになったAKIKOの乳房を、目黒が絞り上げ、指先で乳首を摘むと、それまで無表情だったAKIKOが切ない表情であえぎ始めた。
「はうっ。ああーっ。」
「SIZUKA、モニタ報告!」
「快感度が上昇中です。現在、電子脳による生体脳の制御ロード30%です。」
「AKIKO、快感増幅装置を起動しろ。レベル2だ。」
乳房を揉みながら、目黒が指先で陰唇の間に見える突起を刺激すると、AKIKOはダルマボティを切なそうにくねらせた。
「あうっ。ああっ。」
「SIZUKA、モニタ報告!」
「快感度が更に上昇中です。電子脳による生体脳の制御ロード60%です。」
「まだ余裕があるな。レベル3だ。」
目黒は突起から蜜壷に指を移動させた。既に潤滑液で充分に潤ったそこは目黒の指をするりと奥深く受け入れた。
秘唇から潤滑液がこぼれ出てベッドのシーツを濡らした。
「くーっ。すごい締め付けだ。」
指先で奥に刺激を与えると、AKIKOはひときわ高く声を上げて、絶頂に達した。
「ううっ。ああっ。あううーっ!」
そのとき、突然SIZUKAが警告を発した。
「生体脳の反応がAKIKOの電子脳の制御限界に達しました。電子脳は緊急停止します。生体脳を制御できません。生体脳が覚醒します。」
「しまった。やりすぎたか。」
それまで、目黒にされるがままだったAKIKOが、突然騒ぎはじめた。
「どうして私はこんなとこにいるの?ここは、何処?起きあがれないわ。きゃーっ、腕も脚も無いわ。お腹が開いてる。SIZUKAと繋がってる。」
「あらら、オリジナルの自我が戻っちゃったよ。電子脳が壊れたかな。」
「電子脳の保護回路が作動して、一時的に停止しています。10分以上停止してから再起動すれば復帰します。」
「それを聞いて安心したよ。」
「電子脳って何の話?それより、あたしの身体はどうなってるの?」
「お前の身体はロボットに改造されたんだ。電子脳っていうのは、お前の電子脳のことだよ。」
「あたしの電子脳?あたしがロボット?」
「そう。お前は、スーパーリアル娼婦ロボットAKIKOだ。」
「これは夢?そうよ、AKIKOになった夢を見ているんだわ。」
「夢じゃ、こんな感じは味わえないだろ。」
目黒はそう言うと、潤滑液が湧き出る陰唇に再び指を潜り込ませた。AKIKOの股間から脳天に電撃のような快感が抜けた。
「ひーっ。」
AKIKOは海老反りになって悲鳴をあげた。両乳首が天を突くように飛び出した。
「な、何?どうしてこんなに感じるの。」
「快感増幅装置が作動しているからね。娼婦ロボットには必要な機能なんだ。」
「何の話をしているか判らないわ。娼婦ロボットって、あたしをモデルにしたAKIKOのことでしょ。」
「だから、お前自身がAKIKOなんだって。昨日、お前が飲んだロボビタンには人間をロボットに改造するナノマシンが入っていたんだ。
悪いと思ったけど、やっぱり娼婦ロボットの実物が必要だと思ったからね。あー、説明が面倒だ。SIZUKA、AKIKOの記憶を戻してやれ。」
「了解しました。」
AKIKOの頭の中でカチッと何かが外れた感じがした。突然、昨夜のシーンや会議のシーンが頭に蘇った。
「これは?」
「全部思い出したかい、AKIKO。」
「いやーっ!私に何をしたの。どうして私がロボットなの?」
「人間そっくりのロボットを作るのに、人間を土台として使っただけさ。ごく自然な発想だよ。
ナノマシンという目に見えない位小さな機械を使って、お前の肉体を内部から機械ボディに作り替えたんだ。
もう脳も半分が電子脳に改造されている。完成すれば、お前は命令に従順なロボットになる。」
「そんな!知らないうちに勝手にあたしをロボットにしてしまうなんて、非道いわ。鬼!悪魔!あたしを元に戻して!」
AKIKOの罵声を気にも止めず、目黒は携帯電話を取り出して、話し始めた。
「もしもし、叔父さん。健人だけど。AKIKOの改造状況?イマイチだね。そっちにデータを送ったから、確認してよ。セクサロイドモードでイカせたら、自我が戻っちゃったんだ。
加賀部長は、明日クライアントとAKIKOに本番させるって、勝手に決めちゃったんだけど、AKIKOがこれじゃあ、どうしようもない。」
「待って!あたしがAKIKOだってことは、明日の本番は、あたしがするってこと?
いやよ。あたしはセックスの玩具なんてまっぴらよ。」
「もう、とっくにセックスの玩具だよ。SIZUKA、僕が電話している間、AKIKOの快感増幅装置のテストをしててくれ。
電子脳が停止しているから、レベルの変更はできないけど、レベル3のままのテストなら、できるだろ。」
「可能です。テストを開始します。」
SIZUKAは手を伸ばして、金属の指でAKIKOの乳房を掴んだ。
「何をするの?」
「レベル3における機能確認をします。」
掴んだ乳房をゆっくりグラインドした。
「はああーっ。」
レベル3の快感増幅によって、乳房を掴まれただけで、思わず蕩けそうになった。
SIZUKAの指は、乳首に移った。乳房を掴まれただけでこの快感なら、敏感な乳首を責められたらどうなるかと思うと、AKIKOは怖くなった。
「ちょ、ちょっと、やめなさい。このバカロボット。」
「AKIKO、あなたは私の下位ロボットに設定されています。あなたは私に指示する権限はありません。テストを続行します。」
「ひーっ。あうっ。」
SIZUKAの容赦ない責めをうけて、AKIKOのボディは倍増した快感に震え、陰唇は再び潤滑液の分泌を始めた。
「あたしは、人間よ。おまえのようなブリキロボットと違うわ。」
「あなたの発言の意味が不明です。過去において人間であったという意味では、私もあなたも同じです。」
「ええっ?それじゃ、あなたも元は人間?」
「はい。私は西園寺静香という人間でした。黒崎研究所で秘書ロボットに改造されました。」
「なんて恐ろしいこと・・。あうっ。いやっ。SIZUKA、やめて。」
AKIKOは、すごい形相で目黒を睨んだが、SIZUKAの愛撫による快感が何倍にも増幅して襲い掛かり、ただ喘ぐしかできなくなった。
その間、目黒は携帯電話で黒崎と会話を続けていた。
「ごめんね、叔父さん、話を中断して。ちょっと立て込んでいたんだ。えっ、荷物?ああ、なんか小包が届いていたな。開けてみろって?リモコンだ。AKIKOのリモコンだね。」
目黒は、ケースからリモコンを取り出した。
「AKIKOがヤバくなったら、これで停止しろということか。よし、試してみよう。SIZUKA、ちょっと離れてくれ。」
SIZUKAがAKIKOから離れると、目黒はリモコンをAKIKOに向けた。SIZUKAの愛撫から解放されてほっとした途端、妙な機械を向けられて、AKIKOは不安になった。
「その機械は何?あたしに何を・・・。」
その言葉を最後にAKIKOは意識を失った。
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突然、風間は眠りから目覚めた。いつものパジャマを着て自宅のベッドの中だった。窓から朝の光が差し込んでいた。
「7時だわ。」
なぜか時計も見ないのに時間が判った。セットしてあった目覚まし時計のアラームが鳴り始め、停止ボタンを押しながら、風間は不思議に思った。
いつもは目覚ましが無いと絶対に起きないし、起きた後も決して寝覚めのいいほうではなかった。
それなのに今朝はまるで自分の中でタイマーが働いているかのように目覚めた。起床直後の気だるさも眠さも無かった。
「昨日、白鳥クリニックで頭痛薬を飲んで眠ってしまったはずよね。いつ、家に戻ったのかしら。思い出せないわ。」
昨日のことを思いだそうとしたが、思い出すのを拒むように頭の中に霧がかかっていた。何か悪い夢を見ていたような気もする。
朝食を食べようと思ったが、食欲がないことに気づいた。
「疲れているせいかしら?ここのところ、忙しかったから。」
風間はとりあえず何も食べずに会社へ向かった。
出社すると、目黒がSIZUKAのメンテハッチを開けて調整中だった。
「目黒君、おはよう。SIZUKAはスタンバイしているのね。AKIKOはまだ届いてないの?」
「あっ、課長、おはようございます。AKIKOはまだ開発中で調整が必要なんで、ぎりぎりに届く予定です。」
「そういえば私、AKIKOをまだ見ていないのよね。」
「そうですね。ちょうど体調の悪いときと重なってしまいましたからね。」
そこへ森下が挨拶してきた。
「課長、おはようございます。」
「未来ちゃん、おはよう。」
「昨日、課長のお見舞いに白鳥クリニックへ行ったんですけど、もうお帰りなっていたんですね。」
「そうだったの?いつ家に戻ったのか記憶がないのよ。朦朧としてのかしら。」
何か大変なことを忘れている気がしたが、どうしても思い出せなかった。
目黒が二人の会話に加わった。
「課長が帰りたいと言うので、僕とSIZUKAで課長を自宅まで送って行ったんですよ。」
「そうだったかしら?そういえば、そんな気もするわ。」
目黒の言葉を聞くと、そんな風に思えてきた。二人と別れて席に着くと、電話が鳴った。
「もしもし、白鳥ですが、風間さんですか。」
「風間です。昨日はどうも。」
「その後、頭痛はどう?」
「ええ、おかげさまで治まったわ。」
「そう。それならいいわ。もし、また頭痛がしたら、いつでも来ていいわよ。」
「商売熱心ね。そのときはお願いするわ。」
風間は仕事にとりかかると、没頭してマシンのように仕事をこなした。
昼休みのチャイムが鳴ると同時に、森下が風間を昼食に誘いに来た。
「未来ちゃん、7秒早いわ。」
「何がです?」
「お昼休みの開始時間よ。」
「そうですか?いいんじゃないですか、7秒くらい。それより、お昼、一緒にどうですか。」
「ありがとう、未来ちゃん。でも今は食欲がないの。」
「そうですか。でも何か食べないと身体に毒ですよ。」
「ええ、判っているわ。でも体調は悪くないのよ。」
「そうですか。じゃあ一人で行きます。」
森下を見送って、風間は昼休みに何をしようかと思ったが、何も思いつかなかった。結局、仕事を続けた。
食事から戻った森下は、風間が仕事を続けていることを不思議に思った。
「風間さん、いつから、あんな仕事の鬼になったのかしら。」
目黒が昼食から戻ると、同僚の鮫島がやってきた。
「目黒。今、受付から連絡があったぞ。公営娯楽事業課の山木というやつがお前を訪ねてきたそうだ。」
「おっ、もう来たか。サンキュー。」
風間にクライアントが来たことを伝え、目黒は受付に向かおうとすると、鮫島が目黒に話し掛けてきた。
「目黒。お前、課長と仕事しているのか?」
「ああ。公営ロボット娼館の案件を一緒に担当しているんだ。」
「そうか、お前には黒崎研究所のつながりがあるもんな。いいな。俺も一度でいいから課長と仕事したいぜ。」
「お前、新入社員の時から、風間さんのファンだったな。悪く思うなよ、鮫島。」
羨ましそうな鮫島の視線を無視して、目黒は受付に向かった。
目黒がクライアントを執務室に案内して来ると、加賀部長と風間課長が出迎えた。
「ここが、今回の仕事を担当する公共事業課です。部長の加賀と課長の風間を紹介します。」
「どうも、加賀と申します。」
「風間です。よろしくお願いします。」
「公営娯楽事業課の山木です。よろしくお願いします。」
「同じく、木下です。いやぁ、おきれいな方だ。あなたのような方がロボット娼婦のモデルになっていただければ、公営ロボット娼館は成功間違いなしだ。はっはっはっ。」
「今日お見せするスーパーリアルロボットは風間をモデルにしています。目黒君、準備はできているか?」
「すみません。まだ少し準備に時間が掛かります。まもなくお見せできるようになります。」
「目黒君、クライアントを待たせては悪い。できるだけ急いでくれ。」
「わかりました。」
加賀は、山木、木下に向き直った。
「それでは、先にデモルームにご案内します。今日は存分に娼婦ロボットの感触を確かめてください。
相手はロボットですから、いくら触りまくっても文句はいいません。それこそ、玩具にしてください。ははは。」
クライアントと加賀部長の話を聞いていると、風間はまた頭痛を感じた。加賀部長がクライアントを連れて行ってしまうと、森下と目黒に頭痛のことを話した。
「未来ちゃん、また頭痛がするの。悪いけど、ちょっとクリニックに行ってくるわ。」
「それは大変だ。森下は、SIZUKAを連れて部長とクライアントの対応しててくれ。僕は、課長に付き添ってからAKIKOをデモルームに連れて行くよ。」
「判ったわ。」

風間を診断した白鳥有香は首を傾げていた。
「ふーん。どこも異常はないわ。」
「でも、頭がとても痛いのよ。」
「そう?じゃあ、頭痛薬を変えてみるわ。それで様子を見てちょうだい。」
白鳥は調薬室に入ると、水野咲子に調合を指示した。
「はい、風間さん。これ、頭痛薬です。」
「僕、取りに行きます。」
目黒は調剤室のカウンター越しに水野から頭痛薬を受け取った。
「はい、課長。薬です。」
「ありがとう。」
風間は薬を飲むと、眠気を覚えた。
「なんだか、眠くなったわ。どこか横になれるところある?」
「そうね。奥の病室のベッドを使うといいわ。会社に戻る時は裏口を使うといいわ。一般の患者さんと顔を会わせずに済むから。」
「ありがとう。」
風間は目黒に付き添われて病室に入っていった。

デモルームでは、クライアントたちがスーパーリアルモデルの登場を、首を長くして待っていた。
「風間が急に体調を崩し、ちょっと病院に行っておりますので、予定が少し遅れております。ですが、目黒がまもなくスーパーリアルモデルを連れてここに来ます。少々お待ちください。
それまで、このSIZUKAをご覧になってください。SIZUKAは黒崎研究所の技術の粋を集めて製造された特別モデルで、量産モデルとは全く異なり・・・。」
森下が場を繋いでいると、目黒がAKIKOを連れてデモルームに入ってきた。森下がAKIKOを見ると、ほっとしたように駆け寄った。
「課長!もう良くなったんですか。」
「森下、課長じゃなくてAKIKOだよ。」
「えっ?あっ、そうか。」
「それより部長がいないね。何処へ行ったの?」
「それが、さっきまで居たんだけど急にどっか行っちゃったのよ。一人で大変だったわ。」
森下は再び、デモルームの前方中央に立つとAKIKOを紹介した。
「皆さん、お待ちかねのスーパーリアルモデルAKIKOです。」
木下も山木もAKIKOを見て驚いた。
「ほーっ、確かに風間課長そっくりだ。」
「これで、風間課長がいれば、ダブルAKIKOになるのに。」
このとき森下は、風間亜希子とAKIKOがいっしょに居たことがないことに気づいた。
「風間さんが実はAKIKOだったりして。まさかね。あたし、何変なこと考えてるんだろう。」
森下は、自分の考えを振り払った。
「それでは、AKIKOの操作担当、目黒と交代します。」
目黒が、森下と入れ替わって、AKIKOのプレゼンを始めた。
「それでは実際に皆さんの目でAKIKOを直に見ていただきましょう。」
目黒はAKIKOに脱衣を命じ、クライアントの前に立たせた。山木と木下はAKIKOに裸を上から下までじろじろ眺めた。
「ほう、きれいな肌だ。見ただけではロボットとは思えんな。本当にロボットなのか?」
「ロボットである証拠をお見せしましょう。AKIKO、メンテハッチを開けろ。」
AKIKOの腹部に継ぎ目が現れ、ハッチが開くと、機械が詰まった腹の中を曝け出した。山木と木下はまじまじと覗きこんだ。
「なるほど。確かにロボットだ。」
AKIKOのメンテハッチが閉じると継ぎ目は消えてしまった。
「触ってみてももいいですか。」
「どうぞ。AKIKOのボディの感触が人間の皮膚や筋肉と近いことが判ると思います。」
二人は、AKIKOの乳房、尻、股間と触っていった。AKIKOは無表情に二人のなすがままになっていた。
「うーん。確かに触った感じも人間と変わらん。」
「無反応、無表情というのもロボットらしくていいんじゃないですか、木下さん?」
「そうですか、山木さん?私は、『ああん。』とか言うほうがいいです。」
「では、木下さんのお好みに合わせてAKIKOのもう一つのモードを試してみましょう。AKIKO、セクサロイドモードへ移行しろ。ただし、姿勢はそのままを維持するんだ。」
AKIKOの身体がブルッと震えた。
「では、もう一度触ってみてください。」
山木が乳房を握りしめるとAKIKOがあえぎ声をあげて仰け反った。
「ああーっ。」
「ほう。無反応もいいが、こうして声を出すのもいいな。」
AKIKOは、二人に触られるまま、あえぎ声を出していた。身悶えしながらも、姿勢を維持しようと小刻みに太股が震えていた。陰唇から漏れてきた潤滑液が太股の内側を伝って行った。
「おっ、濡れてきた。これはリアルだ。」
「いやあ、こんなきれいな女性の身体を触りまくることができるなんて、夢見たいですな。現実にこんなことしたら、セクハラで訴えますよ。ねえ、森下さん。」
「はあ。」
森下は心の中では、自分とセックスロボットと比べるな、と思いながら、曖昧に返事した。
「そうだ。夢のようだから娼館の名前はドリームを使おう。ロボットを使うから、ロボドリームなんてどうかな。」
「それより高度技術というイメージでテクノドリームがいいんじゃない。」
「よし、テクノドリームにしよう。」
「まあ、素敵なお名前ですね。」
イージーな名前だと思いながら森下は二人に同調した。
いつの間にか戻ってきた加賀部長がにやにやしながら、そこへ割り込んできた。
「どうです。お二人でAKIKOを試運転してみてはいかがですか。」
「試運転というと?」
「ロボット娼婦としての機能を確認することですよ。」
「いやあ、こんな人前ではちょっと。遠慮しますよ。」
「ご心配なく、ホテルの部屋を用意しています。じゃあ準備してくれ、目黒君。」
目黒は慌てて、加賀の耳元で囁いた。
「部長、まだそっちはテストしてないですよ。」
「馬鹿野郎。おまえは、この絶好のチャンスを逃すつもりか。なんかあったら俺が責任をとる。いいからやらせろ。」
「部長がそこまで言うなら・・・。」
人間をロボットにしたことがバレたら、加賀では責任を取りきれないだろうと思いながら仕方なく従った。
「では、ホテルにご案内します。」

加賀が用意したホテルの部屋にクライアントとAKIKOが入っていった。加賀と目黒と森下は、木下と山木の事が済むのを待ちつづけていた。
「部長、あたし、風間さんが心配なんで、ちょっと覗いてきてもいいですか。」
「だめだよ、森下。クライアントのいる場所から離れるなんて。」
「どうせ向こうはセックスロボットに夢中で、あたし達のことなんか気にしちゃいないわよ。」
「そんなことないよ。見えなくても、ちゃんと誠意は伝わるさ。ねっ、部長。」
「目黒。お前、いいことを言うようになったな。そのとおりだ。森下、目黒を見習え。」
「目黒。あんた、いつから優等社員になったの?」
突然、部屋からAKIKOの悲鳴が聞こえた。
「きゃーっ。いやーっ!」
森下と加賀が慌てふためいた。
「ちょっと。AKIKOの声よ。大丈夫?」
「目黒。何だ、あれは?何かあったらお前の責任だぞ。なんとかしろ。」
「大丈夫。すぐ収まりますよ。」
目黒が、こっそりポケットの中でリモコンのボタンを押すと、AKIKOの声が止まった。
事を終えた山木と木下は、少し呼吸を荒くして、満足そうに出てきた。
「いやあ、素晴らしいの一言です。」
「堪能しました。これなら事業の成功まちがいなしですよ。はははっ。」
「最後の悲鳴は何だったんですか。」
「すみません、驚かせてしまって。いま、試作中のレイプモードが作動してしまったようです。」
「なるほど。そういう嗜好の客も考えられますね。完成したら是非私に一番に試運転させてください。はははっ。」
「皆さんに喜んで頂けて良かった。」
加賀は擦り寄るように山木、木下に媚をうった。
「じゃあ、SIZUKA。僕達はクライアントを見送るから、AKIKOを元の状態に戻して、元の場所に片付けといてくれ。」
「了解しました。」
「そういえば、いつもAKIKOを何処に片付けるの?」
「それは、秘密さ。」
加賀と森下がクライアントの後を追っていなくなると、目黒はSIZUKAにAKIKOのリモコンを渡した。
「これでAKIKOを操作してくれ。それから今の記憶を消去しといてくれ。おれは出来るだけ時間を稼ぐ。」
「了解しました。」
クライアントをタクシーに押しこみ、一息付くと、すぐに帰ろうと言う目黒に、森下は風間を見舞いに行くと言い張った。
渋る目黒を連れて、森下が白鳥クリニックに行くと、白鳥クリニックは患者で溢れていた。
「すみません、先生。風間さんは?」
「えっ、風間さんなら奥の病室にいるはずよ。」
「はずって、先生。見てないんですか。」
「御免なさい。今日は、なぜか患者さんがいっぱい来て、私も咲ちゃんもてんてこまいなのよ。」
「ちょっと覗いてもいいてすか。」
「いいわよ。元気付けてあげて。後で一段落したら私も行くわ。」
病室のドアを開けるとSIZUKAが居た。
「SIZUKA!どうしてここに?」
「ああ、AKIKOを片つけた後、風間さんの所へ行くように指示しといたんだ。身の回りのこととか、SIZUKAが居れば便利だろうと思ってね。」
「目黒にしちゃ、気が利くわね。」
「僕はいつも気が利くさ。」
風間は静かに寝息を立てていた。
「ちょっと僕はSIZUKAのメンテをしておこう。」
目黒はSIZUKAのメンテハッチを開けて、内部をチェックする振りをして、AKIKOのリモコンを取り出した。
森下に聞こえないようにSIZUKAと小声で話し始めた。
「AKIKOの記憶は消去したか。」
「申し訳ありません。電子脳にトラブルが発生して、生体脳の記憶制御が不完全です。
電子脳の記憶は消去しましたが、状況によっては生体脳から記憶が戻る可能性があります。」
「わかった。デモの話は避けるようにしよう。」
森下がベッドに近づくと、風間が目を覚ました。
「ああ、未来ちゃん。来てくれたの。」
「すみません。起こしちゃいましたか?気分はどうです?」
「うーん。まだ頭がぼーっとするわ。ごめんなさい。デモに出席できなくて。」
「課長。デモのことは気にしないでください。」
「そうですよ、風間さん。ゆっくり休んでください。」
そのとき、どかどかと音がして加賀が病室に入ってきた。
「おお、風間君。どうだ、調子は?」
「ご心配かけてすいません。まだ、調子悪いです。」
「そうか。ところで君に見せようと思って持って来た物があるんだ。」
「なんですか。」
「AKIKOのビデオだよ。デモルームの視聴覚設備の中にビデオカメラがあったんで録画しといたんだ。」
「部長。あのとき居なくなったと思ったら、カメラをセットしていたんですか。」
まずいと目黒は思ったが、加賀は、目黒の心配を知らず、AKIKOのビデオを風間に見せた。AKIKOが登場するところだった。
「ねっ、風間さん。本当にそっくりでしょう?」
「ええっ。そ、そうね。」
そう言った風間の声は震えていた。やがてAKIKOが裸になって男たちの嬲りものになると、風間の表情が険しくなった。
「なんだか自分が弄ばれているみたいだわ。」
「全く、私の目の前でこんなデモは止めてほしかったわ。恥ずかしいったらありゃしない。」
「本当にそうね。」
そういった途端、風間はぼろぼろと涙を流した。
「どうしたんですか?風間さん。あたし、何か気に障ること言いました?」
「ううん。そうじゃないの。なぜだか判らないけど涙が出てくるの。」
森下はビデオを停止して、風間を抱きしめた。
「AKIKOが自分と重なって、玩具になるシーンが絶えられなかったのね。」
「こんなビデオで君が泣き出すとは思わなかった。儂は帰る。後は君達、頼んだよ。」
むっとして帰った加賀を見送った後、森下は風間に尋ねた。
「風間さん、どうします。もうしばらく休んでいきますか。」
「私、家に帰りたいわ。」
「じゃあ、僕が送って行きますよ。」
目黒の言葉に、風間はビクッとした。
「いや。未来ちゃんに送ってほしい。」
「えっ。僕じゃだめですか。」
「目黒。こういうときは女同士のほうがいいのよ。」
よろよろと起き上がった風間を抱きかかえ、森下は帰る支度を始めた。
困ったことになったと思いながら目黒は二人を見送った。


第4話 終



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