『メカニカルレディ』
作karma様
第7話 製品量産
「バスが転落した場所は、潮の流れが急で、地元のダイバーも近寄れず、遺体の発見は絶望視されています。」
ニュースのアナウンサーの声を、森下は床に座り込んだまま、遠い世界の出来事のように聞いていた。
「未来ちゃん!未来ちゃん!」
森下の手の中の携帯電話から白鳥の呼ぶ声が聞こえた。森下は、電話を耳に当てた。
「先生。あたし、遅かったわ。もう、駄目だわ。うううっ。」
森下の声は悲しみに震えていた。
「未来ちゃん。諦めちゃ駄目よ。」
「でも、先生。みんな死んだって発表されたんですよ。遺体もみつからないって。きっと、もう、みんなロボットに改造されたんだわ。」
森下は床に座り込んだ。
「よく聞いて。未来ちゃんの想像どおりなら、女の子達はもうロボットにされてるかもしれない。でも、望みはあるわ。」
「慰めは止めてください。」
森下は床に座りこんだまま泣いていた。
「慰めじゃないわ。例の微生物の謎を解明すれば、逆にロボットを人間に戻す微生物も作れるんじゃないかしら。」
それを聞いた森下の表情が明るくなった。
「そうか!先生の言うとおり、人間をロボットにできるなら、逆もできるはずですよね。諦めちゃだめですね。」
「そうよ、未来ちゃん。とりあえず戻ってきなさいよ。一緒に対応策を考えましょ。」
「ええ。」
そう答えてから、森下は考えなおした。
「ごめんなさい、先生。やっぱり、あたし、みんなが心配なんで、これから黒崎研究所へ行きます。」
「ちょっと、やめて、未来ちゃん。貴方まで捕まっちゃうわ。」
「大丈夫です、先生。気をつけますから。」
「未来ちゃん!」
森下は、白鳥の制止を聞かず携帯電話の電源を切り、パーキングを出発した。
森下が黒崎研究所に着いたとき、もう薄暗くなっていた。
「みんな、どこに居るのかな。まだロボットにされていなければ、いいんだけど。」
森下は、離れた物陰から研究所の正門を伺っていた。アーマースーツのようなボディの女性型ロボットが何体も正門を警備していた。
ロボットたちは、一定周期で正門の周囲を巡回していた。
「警備が厳重だわ。ただの研究所じゃないわね。正面から潜入は難しそうだわ。
通用門はどうかしら?」
しかし、通用門にも同じ女性型警備ロボットが2体配備されていた。
「こっちもロボットが警備してるのか。隙は無さそうね。困ったわ。」
そのとき、トラックが一台通用門に近づいて来た。
「よし、あの荷台に隠れよう。」
森下が出ようとすると突然、肩をつかまれた。あわてて、振り向くと、白鳥が立っていた。
「先生!どうしてここに?」
「しーっ。大きな声を出さないで!」
森下は慌てて口を塞いだ。
「あなたが心配だったから、慌てて来たのよ。正門はロボットがいっぱいだから、通用門だろうと思って。あなたこそ、今何をしようとしてたの?」
「あのトラックのコンテナに隠れて潜入しようとしてたんです。先生のお蔭でタイミングを逃しちゃいましたよ。」
「あら、それはごめんなさい。」
トラックは通用門で止められ、警備ロボットはコンテナを開けて中をチェックした。
中には大きな木箱があって、「特殊修理室行き」と書いてあった。
警備ロボットは木箱の梱包用ベルトを外し、上蓋を開けた。中の荷物は森下達から、はっきり見えなかったが、人型のもののようだった。
突然、警備ロボットが警告を発した。
「生命反応を確認!」
警備ロボットが箱に手を入れた。すると箱からネズミが一匹飛び出し、敷地内にはいった。
「小動物が敷地内に侵入します。消去します。」
そういうと、もう一体の警備ロボットは両目からビームを発射し、ネズミは黒焦げになった。
「点検依頼のロボットを確認。生命反応はありません。」
その後、トラックは敷地内の奥に消えていった。
「あのネズミが、未来ちゃんの運命だったかもね。」
「うっ。」
森下は言い返せなかった。
「でも、早くみんなを救いださないと。どこかに運びだされたら、救出できなくなってしまうわ。」
「だからといって、無茶なことをしたら、あなたまで捕まってしまうわ。そうなったら、誰が彼女たちを救うの。」
「それはそうですけど。」
「でも、未来ちゃんの心配ももっともだわ。二人で中に入ってみましょ。」
「あんなロボット相手にどうやって、侵入するんですか?」
「大丈夫よ。まず、これに着替えて。」
白鳥から渡された服は、普通のスーツだった。
「普通の服じゃないですか。どうして着替えるんですか?」
「黒崎所長に面会を申し込むのに、そんなライダースーツじゃ変でしょ。」
「ええっ!黒崎に面会?そんな無茶ですよ。」
「いいから、着替えなさい。未来ちゃんが言うほど、無茶じゃないわ。もし、OKしてくれれば、正々堂々と中に入れるのよ。」
「たしかに、そうですけど、そう簡単に面会してくれますか?」
白鳥に何か策があるのだろうと、森下は、渋々ライダースーツを脱ぎすて、服を着た。
「さて、着替えましたよ。で、どんな作戦で黒崎に面会を申し込むんですか?」
「実はあたし、黒崎所長とは以前会ったことがあるのよ。」
「へーっ、すごいですね。いつごろの話ですか?」
「うーん。八年前かな。」
「えーっ!そんな昔じゃ覚えてないですよ。」
「やってみなきゃ、判らないでしょ。」
「それはそうですけど。」
森下の不安を余所に、白鳥はスタスタと通用門に入っていった。
「あっ、先生。待って!」
当然ながら、白鳥は通用門で警備ロボットに呼び止められた。
「失礼ですが、ご用件は何ですか?」
「私、開業医の白鳥有香と申します。黒崎所長に面会したいんですが。」
「所長に面会ですか?」
警備ロボットはしばらく宙を見て、白鳥に向き直った。
「アポイントデータベースを確認しました。この時間に、所長に面会の予定はありません。」
「ええ、約束はしてません。たまたま、近くまで来たものですから、久しぶりにお会いしたいと思いまして。」
「所長に確認します。少々お待ちください。」
警備ロボットから呼び出し音が聞こえた。
「所長、こちら警備ロボットR0C2です。今、通用門に白鳥さんという女性が、所長に面会したいと言ってます。」
返事は森下の予想通りだった。
「所長は、あなたのお名前に記憶が無いそうです。」
「ちょっと、待って!黒崎さんと話をさせてください。」
「所長。白鳥さんが所長とお話したいそうです。」
警備ロボットは胸から受話器を取り出して、白鳥に渡した。
「もしもし。白鳥有香と申します。八年前にお世話になったものです。
名前が変わってしまったし、昔のことなので覚えていらっしゃらないかもしれませんが。
ええ、そうです。私です。思い出して頂けましたか?近くまで来たものですから、ちょっと昔話でもできればと思いまして。」
白鳥は警備ロボットに受話器を渡し、森下に向かって親指を立てた。
「失礼しました。では、白鳥さん。お通り下さい。お連れの方のお名前を聞かせてください。」
「看護婦の水野です。」
「わかりました。では、所長室の場所をお教えします。」
「いえ、判るからいいわ。」
白鳥は、警備ロボットに構わずスタスタと進んでいった。森下は慌てて白鳥に追いついた。
「いったい、先生と黒崎所長とどういう関係なんですか。」
「言ったでしょ。古い知り合いだって。」
「それは、そうですけど。」
「咲ちゃんと一緒にこの近くに住んでいたのよ。」
「へーっ。そうだったんですか。名前が変わったといってましたけど、結婚されてたんですか。てっきり未婚だと思ってました。」
「いろいろ、あってね。そんなことより、早くみんなを探しましょ。さて、どこから探そうか?」
「先生。建物の中は判っているんじゃないんですか?」
「判るわけないでしょ。」
「だって、さっき、判るって言ったじゃないですか。」
「馬鹿ね。場所を聞いちゃったら、迷った振りができないでしょ。よし。地下から行くわよ。」
「まったく。どっちが無謀なんだか。あっ。先生、待って下さい。」
どんどん階段を降りてい白鳥を、慌てて追いかけた。二人が地下1階をウロウロしていると、整備室という表示があった。
「ここ、怪しいわね。」
白鳥がドアノブを回してみると、ロックがかかっていた。ドア横のテンキータッチパネルと4個の数字パネルがあった。
「4桁の数字ね。これでどうかしら。」
白鳥がキーを幾つか叩くとロックが外れた。
「開いたわ。」
「すごい。先生、どうやったんですか。」
「クロサキだから、9639を入力してみたの。」
「それで、開いちゃうんですか?」
中に入ってみると、真っ暗だった。森下は手探りでスィッチを探して、照明をつけた。
森下は、その光景にあげそうになった悲鳴を、口を塞いでこらえた。
「うぐぐーっ。うーっ。」
何体もの裸の女性が人形のように、一様に無表情に横一列に並んでいた。
彼女たちは、床に描かれたマス目の中に一体ずつ収まって立っていた。
女性達は森下の知っている顔ばかりだった。
「ううっ。こんなことって。」
その中に、見慣れた顔のくびれたウェストの巨乳女性を見つけた。
山川恵だった。森下は肩をゆすった。
「恵!恵!お願い、返事をして!」
「はい。私はメカニカルレディMEGUMIです。どのようなご要望にもお答します。
お客様、どのようなサービスをご希望ですか。」
山川は抑揚のない声で森下に答えた。
「ううっ。恵がロボットになっちゃった。」
森下はヘナヘナとその場所に座り込んでしまった。
「未来ちゃん、しっかりしなさい!黒崎研究所の悪事を暴くんでしょ。」
白鳥が声を掛けなかったら、森下はそのまま、いつまでも座り込んでいそうだった。
「そうね。あたしがこの悪事を公表して、みんなを救わなきゃ。」
森下は、涙を拭いて、気力を奮い起こして立ち上がった。
「あたしは黒崎所長の所に行って、時間を稼ぐわ。その間に、未来ちゃんは、これに着替えて、証拠を集めてちょうだい。」
白鳥は鞄の中から、真っ黒な全身タイツのようなスパイスーツを取り出した。
「先生。どこからこんな服持ってきたんです?」
「あたしの友達にスパイごっこが好きな子がいるのよ。暗視ゴーグルとか赤外線カメラもあるわ。早く着替えて。」
伸縮性の身体にフィットする服なので、確かに動きやすそうだった。頭を覆うマスクや手袋も付いていた。
森下がスーツを脱いで、スパイスーツを着ようとすると、白鳥が止めた。
「下着も脱ぐのよ。身体に密着させないと駄目よ。」
「ええっ?裸になるのは恥ずかしいわ。」
「何言ってるの。女同士でしょ。時間が惜しいわ。早く着替えて!」
森下は、反論したかったが、確かに口論する時間もないので、渋々下着を外した。
そのとき、廊下で白鳥を呼ぶ声がきこえた。
「白鳥先生!どちらですか?!」
さっきの警備ロボットの声だった。
「まずいわ。警備ロボットだわ。あたし、何とか、ごまかすわ。未来ちゃんは、ここで隠れてて。」
「あっ、ちょっと。先生!あたしの服!」
「すぐ、戻るわ。待ってて。」
白鳥は、裸の森下を残したまま、ドアを開けて出ていった。森下は、ドアに耳を当て、外の会話に聞き耳を立てた。
「ロボットさーん。あたしはここよ!」
白鳥の声に、警備ロボットが近づいてきた。
「白鳥先生。ここは一般の方は立ち入り禁止です。」
「ご免なさい。あたし、方向音痴だから、変な所に迷い込んでしまったわ。」
「ピピ。方向音痴。意味・・・方向についての感覚が鈍く、道に迷いやすいこと。理解しました。では、私が所長室にご案内します。」
「えっ?ああ、そうね。お願いするわ。」
白鳥があっさりOKしたので、森下は慌てた。
「ちょっと、先生。あたしの服を返してよ。」
白鳥は、あっさりと警備ロボットに付いて行ってしまった。
森下は外へ飛び出して服を取り返したかったが、そういうわけにも行かず、ガッカリして座り込んだ。
部屋の温度は裸でも特に寒くは無かったが、服のない自分は、何だか心許なかった。
「誰か来たら、どうしよう。」
そう思った途端、ドアの向こうから足音が近づいてくるのが聞こえた。
話し声は途切れ途切れでしか聞こえないが、整備室という言葉が聞こえた。
「まずいわ。こっちに来そうだわ!」
部屋を見渡しても、身を隠す場所は見当たらなかった。ドアに耳を当てると、話し声がさっきよりはっきり聞こえてきた。
「藤原。赤川さんが急に呼び出すなんて、何の用だ?」
「何だ、佐々木。聞いてなかったのか。まだ、テストが終わっていないロボットがあるんだってさ。」
「変だな。俺達の分担はちゃんと終わってるはずだぞ。赤川さん、自分の忘れた分を押しつけてきたんじゃないか?赤川さんは来ないの?」
「用があるから、遅れるってさ。」
ドアの間近で声が止まった。
「裸を隠すなら裸の中よ。」
森下は、横一列に並んだかつての同僚達の最高尾に空きのマス目を見つけ、急いで、その中に立ち、無表情の顔を作った。
森下がマス目に立つと同時にドアが開き、二人の男が入ってきた。
「おい、佐々木。ドアにロックが掛かっていないぞ。」
「ああ、照明も消し忘れてるぞ。」
「赤川さんに見つかったら、怒鳴られるところだったぜ。さて、うるさい上司が来ないうちに、さっさと終わらせようぜ。」
藤原がボードに挟んだ伝票を確認した。
「えーと、製造番号ML20だってさ。何処にあるかな?」
佐々木と藤原は一体々々のマス目の中に描かれている番号を確認していった。
「来ないで。こっちに来ないで。」
森下は、無表情を装いながら、そう、念じていた。森下の必死の願いにもかかわらず、佐々木と藤原はじわじわと森下に近づいてきた。
「ここだ。ML20はこれだ。」
佐々木と藤原が指さしていたのは森下だった。
「嘘でしょう?なんであたしなの?」
森下は、逃げ出そうかと思ったが、折角ここまで潜入できたことを無駄にしたくなかった。しばらくロボットの振りをして様子を見ようと思った。
「えーと、こいつの名前は何かな?あれ?伝票が空欄になってる。」
藤原は2枚目、3枚目と伝票をめくってみたが、何処にも名称は書いていなかった。
「赤川さん、忘れてるよ。しょうがないなあ。」
「このロボットに聞けばいいんじゃない?」
「それもそうだな。」
藤原は森下に問いかけた。
「おい、聞こえるか?お前の名前を答えろ。」
森下は、覚悟を決めた。ロボットの振りをして、平坦な抑揚を努めて答えた。
「私はメカニカルレディMIKIです。」
「よし、MIKI。いまから、お前のテストを始める。」
「了解しました。」
「外観検査を始める。まず、一歩前に出ろ。」
森下は、命じられるまま、一歩前に出た。佐々木と藤原は、森下の身体を上から下まで丹念に目視検査した。
裸の身体をジロジロと眺められ、森下は恥ずかしくて、たまらなかった。
ふと、子供の時の盲腸の手術痕があったことを思いだし、見つからないように祈った。
「目視検査、OK。皮膚表面に異常なし。」
森下はホッとした。見落としてくれたらしい。しかし、まだ、検査は続いた。
「次は触診検査だ。」
佐々木と藤原は、森下の腕、胸、腹、背中、太股など、あちこちを撫でたり、摘んだりして、感触を確かめた。
「こいつ、肌がスベスベして感触が気持ちいいぜ。赤川さんの特注娼婦ロボットかな。」
冗談じゃない、と思いながら、森下は身体を好き勝手に触られる悪寒に耐えていた。
「次は、歩行テストだ。MIKI、前進しろ。それからターン。右、左、左、右。」
森下は、二人に怪しまれないように命令に従って前に歩きだし、指示どおり左右にターンした。
「MIKI、元の位置に戻れ。ふむ、歩行問題なし。さて、いよいよ性感反応検査だ。」
「待ってました。」
「俺、右ね。佐々木に左を任せるよ。」
性感反応という言葉に、何をされるのか森下は不安になったが、二人は左右からそれぞれ手を延ばして森下の乳首をいじりはじめた。
乳首を蹂躙され声が出そうになるのに耐えていたが、しごかれた乳首が敏感に屹立するのは止められなかった。
二人は森下の乳首をじっと観察していた。
「どうしよう。変に思われるわ。」
森下は不安に思っていたが、二人は平然としていた。
「乳首の反応、正常。」
娼婦ロボットは人間と同じように反応するんだ、と納得していると、脚を広げるよう命令された。
脚を広げると藤原が森下の前にしゃがみ、秘唇に器具を無造作に挿入した。思わずうめき声を上げそうになったが、必死に耐えた。
「あたしは、ロボットになりきるのよ。みんなを救うために、耐えてみせるわ。」
藤原は、森下の股間に刺さった器具の計器を読み取った。
「内部温度、正常。後は膣の反応を確認すれば終わりだ」
ようやく、終わりに近づいたことが判ったが、この試験は難関だった。藤原は秘唇の器具を出し入れ始めた。
「だめ、そんなに動かしちゃ。声が出ちゃう。身体が反応しちゃう。くううぅっ。でも、耐えなくちゃ。いままでの苦労が水の泡だわ。」
藤原は器具を出し入れし、佐々木はじっと股間の変化を観察していた。
「器具を抽送すると、内股の筋肉がヒクヒクするぞ。リアルだなあ。」
「うん。よくできてるよ。」
森下は内部が潤んでくるのを感じた。それとともに、隠微な音を立て始めた。
「潤滑液分泌正常。でも、こいつ、べちょべちょだぜ。ちょっと出すぎじゃないか?もう少し絞るように調整したほうがいいな。」
森下は、二人の頬を思い切りひっぱたいてやりたかった。
気の遠くなるような時間に思える、死ぬほど恥ずかしいテストが、ようやく終わって、ほっとした。
男は森下の前に立ち、直立の姿勢を命じた。
「さて、いよいよ内部テストだ。腹部ハッチを開けろ。」
森下は、もうだめだと思った。そんなこと、本当のロボットでもないのにできるわけがない、逃げるしかないと思い、ダッシュしようとした。
ところが、身体がびくとも動かなかった。
「どうして、身体が動かないの。早く逃げないと、ロボットじゃないってバレるわ。」
いくら焦っても自分の身体ではないように、森下の身体は直立不動の姿勢のままだった。
顔を動かすことすらできないので、男たちの姿ははっきり見えないが、彼らが自分のお腹を覗いているのは判った。
自分のお腹が開かないことに不審を持たれないうちに、何とか逃げ出そうと努力したか、相変わらずビクともしなかった。
そのとき、頭の中に言葉が浮かんだ。
「腹部ハッチ開放。」
森下は、なぜ、そんな言葉を考えたのか、不思議だった。
「えっ?こんなとき、あたしは何を考えているの?」
すると、腹部で何かが起きたような気がした。何が起きたのか確かめたかったが、首を僅かに回すことすらできなかった。
「うーん。他のロボットとは違うようだな。やっぱり、こいつは特別仕様だ。」
「うん。装置類が実にコンパクトに納められている。この配置設計は天才的だ。」
森下の頭は混乱していた。
「どうして、あたしのお腹を覗いて、装置とか設計とか言うの?まさかあたしの身体は..!」
藤原と佐々木が、コンピュータを持ってきて手際よくMIKIの内部とケーブルで接続していく様子が見えた。
「さて、佐々木。動力炉の出力の確認から始めよう。」
「いいぜ。藤原。」
「いやぁーっ。」
MIKIは悲鳴をずっと上げていたが、それは頭の中に響くだけで声に出すことはできなかった。
第7話 終
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