『メタル ドリーム』

作karma様




第4話 拉致


晶の意識が戻ったとき、乳房に違和感を感じた。目をあけると、赤川が自分の乳房を揉んでいる姿が映った。
払いのけようとして、晶は自分の体が動かないことに気が付いた。大きな金属製の台に両手をひろげ、
足をすこし開いた形で拘束されていた。
「おっ、気が付いたか、晶。お前、女だったんだな。服を脱がせてびっくりだぜ。
こんな立派なおっぱいを隠してたなんて、もったいないぜ。知っていたら、俺がこんなふうに可愛いがってやったのによ。」
赤川は晶の乳首にしゃぶりついた。晶は思わずうめいた。
「ううっ、やめて。」
「それにしても、きれいな肌をしているぜ。たまらねえ。所長から手を出すなと言われてたが、かまうものか。」
そう言うと、赤川は上着を脱ぎ始めた。
「やめて、お願い。」
晶の目から涙がこぼれ落ちた。
「男の格好してたときは、生意気な口を聞いていたが、裸にひん剥くと、しおらしくなるな。
待ってな、すぐいい気持ちにさせてやるぜ。」
赤川がズボンのベルトに手を掛けたとき、背後から誰かが赤川に近づいてきた。
「赤川君、大事な商品を君の体液で汚さないでくれたまえ。」
「所長!いいじゃないですか。どうせ、こいつはもうすぐ・・・。」
「私の命令が聞けないというのかね。君は、君の持ち場に付きたまえ。」
黒崎が睨みつけると、赤川は、へいと言ってすごすごと立ち去り、隣の第2作業室に入っていった。
「早めに来て良かった。あいつは手がはやいからな。赤川に君のことを隠しておいて正解だった。
いつ手を出すか判らないからな。」
「あなたは、私の正体を知っていたのね。」
「ああ、知っていたよ。最初からね。」
「知っていて、私を採用したの?」
「外でいろいろ詮索されるより、目が届く近くにいてもらったほうがいいからね。」
黒崎は晶の横に立つと、右手を太股の上に乗せ、舐めるように腹部へと滑らせた。
「空手を習っていたというのは本当のようだな。引き締まったいい体をしている。」
手は更に胸に進み、乳房を揉み始めた。
「なめらかな肌をしている。赤川が私の命令を無視するのも肯ける。おっ、こんなところにあいつの唾液が・・・。」
黒崎はポケットからハンカチを出して、晶の乳首をごしごしとこすった。
「い、痛い。」
晶の悲鳴を無視して、黒崎は検分を進めていった。
「こいつも確かめておかないと。」
黒崎は晶の股間を覗きこみ、左手の人さし指と中指で割れ目を広げた。
「きれいな色だ。予想どおり、あまり使いこんでいないようだな。具合はどうかな。」
いきなり右手の人さし指を晶の中にいれた。
「ひっ。」
晶は思わずのけぞった。黒崎は中を確かめるようにあちこちまさぐった。
「やめて、中で動かさないで!」
「おお、指を締め付けてくる。締まりはいいようだ。これは、このまま使えそうだ。」
黒崎は、指に付いたぬめりをハンカチでふき取った。
「私はこれからどうなるの。どこかに売られるの。」
「その表現はほぼ正しいが、敢えて言うなら、その前に君は、君でなくなる。」
「私を殺すということ?」
「そうであるとも言えるし、そうでないとも言える。」
黒崎はもったいぶった答え方をした。晶は意味が判らず困惑した。
「君は以前赤川に、人間の脳の大きさで高性能電子脳ができるかという質問をしたそうだな。」
これから自分をどこかに売り飛ばそうというのに、技術的な質問をする黒崎の意図が晶には判らなかった。
「それは、ナノマシンで…。」
「そうだ。だが、どう作る。そんな電子脳を設計するだけで、何年もかかってしまう。
我々はもっと簡単な方法を見つけ出したのだよ。」
「ここで、こんな議論をして何になるんですか。私はどこかに売られるんでしょう。」
「なるほど、それもそうだ。では、百聞は一見にしかずで、君に見せてあげよう。
この前、製造したオーダーメイドロボットだ。」
そう言うと、黒崎はポケットから何かの装置を出してボタンを押した。すると、一体のロボットが黒崎に近づいてきた。
「お呼びですか、マスター。」
「静香!」
それは、紛れもなく晶の姉、静香の顔だった。だが、彼女の顔は人形のように無表情で、
全身はメタリックのボディーだった。
「晶君、私の自慢の作品、秘書ロイドSIZUKAを紹介しよう。」
「静香をモデルにしたロボットね。やっぱり、あなたは静香のことを知っているのね。本物の静香は今どこにいるの。」
「この状況で、君の質問は全く適切でない。君の言葉を訂正させてもらうなら、このロボットは静香をモデルにして作ったのではなく、静香本人を作り変えたものだ。つまり、本物の静香は君の目の前にいる。」
「そんな、人間をロボットに作り変えるなんて馬鹿げた話しが・・・。」
「そうかな。君はそれを可能にする手段を知っているはずだ。」
否定しようとしたが、晶の心の奥である考えがまとまりつつあった。それは、とても恐ろしい考えだった。
「まさか、ナノマシンで・・・。」
「そう、ナノマシンを使えば馬鹿げた話しではなくなる。肉体の細胞を一つ一つふさわしい人工物に置き換える。
つまり、手足は駆動装置や制御装置に作り替える。視覚、聴覚は等価なセンサーにおきかえる。
脳細胞は、一つ一つ電子素子に変換して、電子化する。
完全に電子化すれば好みに応じていくらでもプログラムできるようになる。」
黒崎はまるで自分の傑作を紹介する芸術家のように、饒舌に話し始めた。
「私の傑作を見てくれたまえ。SIZUKAのこの曲線美。元は生身の女性だった思うと、
ただのロボットとは一味違うと思わないかね。それに、SIZUKAは実に優秀な秘書だ。」
黒崎は、SIZUKAのメタリックボディを撫でながら、恍惚の表情をしていた。
「それじゃ、オーダーメイドプロジェクトというのは、まさか・・・。」
晶の声は震えていた。
「どうやら、事態が飲みこめてきたようだね、晶君。そう、オーダーメイドプロジェクトというのは、
クライアントの依頼によって、生身の女性を要求どおりのロボットに作り変える極秘プロジェクトなんだよ。
そして、今回選ばれた女性は晶君、君というわけだ。
すべてのロボットの部品のサイズは君の体のサイズに合わせて設計したんだ。」
「それじゃ、最初から私の体に組み込むつもりで、私に動力炉を作らせたというの。そ、そんな。」
晶は、自分が黒崎の奸計によって、自ら、この悪夢の扉を開くはめになったことを悟った。
「君には感謝しているよ。なにしろ、このプロジェクトの難問をあっという間に解決してくれたからね。
だから、特別に念入りに仕上げてあげるよ。君のすばらしい頭脳と美しい体は、永遠のものになるのだよ。
ただし、自由な意思は無いがね。」
「いやっ!。ロボットになるのは嫌よ。静香!助けて!」
晶の声が部屋全体に響いた。妹の悲痛な叫びを聞いても、SIZUKAは無表情に立ったままだった。
「無駄だよ、晶君。SIZUKAの脳は完全に電子化し、マスターである私の命令を最優先するようにプログラムしてある。
私が今日SIZUKAに与えた命令は、君の改造オペレーションの操作だ。ではSIZUKA、配置につきたまえ。」
「了解しました。」
SIZUKAは正確に直進して、晶の横を通り過ぎ、直角に曲がってコンソールの前まで進み椅子に座った。
「SIZUKA、配置につきました。」
「よし、オペレーション開始。」
「オペレーション開始します。」
SIZUKAは、カタカタとキーボードを叩いた。すると、上部からロボットアームが降りてきた。
ロボットアームの先には注射針が備え付けてあり、チューブの先には、赤川の部屋で見たタンクが置かれていた。

第4話/終



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